スペインの歴史が証明する
分煙化の失敗

 日本よりも喫煙率が高く、日本人よりも「自由」へのこだわりが強いフランスで全面禁煙がソフトランディングてきたのは、こういう否定し難いエデビンスがあったということが大きい。

 つまり、先進国でオセロのようにパタパタと飲食店が全面禁煙に転じているというのは、ヒトラーみたいな「禁煙ファシスト」が登場して、なにか独裁的な手法でタバコを迫害しているというわけではなく、ごくごくシンプルに経済性、合理性によるものということなのだ。

 渡邊さんがおっしゃるような「禁煙にしたら小さな店は潰れる」という主張を続けていても、一発逆転ホームランにはなり得ないのだ。

 そう言うと、「よその国ことなんか知るか、日本の分煙設備は世界一なんだから、そういう投網のような全面規制じゃなくて、『世界にひとつだけの花』的な多様性に富んだ受動喫煙規制ができるんだよ」という方がいる。感情的にはよくわかるのだが、実は残念ながらこれも「負けパターン」だ。

 日本人の多くは「分煙」という概念を、なにやら日本人だけしか持っていない斬新なアイディアのように勘違いしているが、「タバコが吸いたい人と、煙が嫌な人を分ければいいんじゃね」という発想は、他の先進国でもちょくちょく実現されており、そして往々にして残念な結末を迎えている。

 その代表が、スペインだ。

 実はこの国では06年から公共施設や職場などで喫煙が禁止されたが、飲食店に限っては、敷地面積によって例外規定が設けられた。具体的には面積100m2以下の店の場合、「喫煙店」にするか「禁煙店」にするかを、所有者が自分で決められることにしたのだ。逆に面積100m2以上は、喫煙室を設置せよとなったのだ。

 もうお分かりだろう、今の自民党たばこ議連が主張されていることと丸かぶりだ。つまり、「日本は分煙先進国を目指すべき」とか「世界に誇る分煙で外国人観光客をおもてなし」みたいな主張は特に斬新な話ではなく、10年前にスペインの愛煙家や飲食店関係者が実行に移しているのだ。

 だったら、なおさら日本もやるべきじゃんか、といきり立つだろうが、残念ながらこの「スペインモデル」が世の中に定着することはなかった。11年1月2日にこの「例外規定」がとっぱらわれてしまうのだ。