よい会議だったからといって
決定事項を実行するとは限らない

 ある会社の、どこにもでもありそうな会議の例をご紹介しましょう。

 社長が出席する営業会議は、なかなか実績が上がらない営業部長にとって針のムシロです。実績報告から始まって営業状況の説明があり、おきまりの言い訳が続きます。いかに現在の営業状況が大変か、同業他社はもっと苦戦しているかを強調して、他部署からの攻撃の矛先をかわそうとするのです。

 そして、本題に入り「どうしたら売れるか」について、久しぶりに建設的な意見が出て、全員が奮い立ちます。

 社長から「君たちの苦労はよくわかる。この会議もよい意見が出たから、引き続きがんばってくれたまえ」といった激励の言葉が出て、お開きとなります。

 出席者はみんなそれぞれの責任に応じて、ほっと胸をなで下ろし、「これで当分いやな思いをしないで過ごせるぞ」「今日の会議はよい意見も出たから、前哨戦で一杯飲もう!」という部長の発案で、意気揚々と夜の街へ繰り出すのです。これは、どの会社でも見られる、日本の和を尊ぶ会議の例です。

 さて、問題はここからです。その結果どうなったのか。何が起きたのか。

「せっかく集まったのに、真の討論はしていない」
「討論をするだけで、決定することがほとんどない」
「決定したとしても、行動しない」

 これが多くの会議の実態ではないでしょうか。

 これでは、会議にかけたコストは無駄であり、利益を食いつぶしただけなのです。

 社長にほめられ、みんなの士気も高まったのだから、さぞ実効が上がるはずだと思うでしょう。しかし、多くの会社では、次の月になっても相変わらず「どうして売れないのか」と、また一からやり直しの会議が始まるのです。