曹洞宗のお寺の住職で『心配事の9割は起こらない』など多くのベストセラー著書がある枡野俊明氏が、悩み多きリーダーを救い、よりよい仕事を実現するためのヒントとなる「禅語」をご紹介していきます。今回の禅語は「少欲知足」。自分にも部下にも「もっと、もっと」を求めるのはよいのですが、行きすぎは禁物です。
際限なく求めても
幸福感は得られない
人間の欲望は際限がないものです。とくに金銭欲や物欲は膨らめば膨らむほど、心をかき乱すものになります。こういった欲望をコントロールして、心の平穏を維持するには「少欲知足」(しょうよくちそく)という禅語を覚えておくといいでしょう。
これは、お釈迦さまがご臨終を迎える直前に示された最後の教えとされる「遺教経」という長いお経のなかに出てくる言葉で、こう書かれています。
「知足の人は地上に臥すといえども、なお安楽なりとす。不知足の者は、天堂に処すといえども、また意にかなわず。不知足の者は、富めりといえどもしかも貧しし」
つまり、「こうして生きていられること自体、ありがたいこと。いまのままで十分だ」と思っている人は、暮らしぶりがどうであろうとも心は豊かである。
一方、「まだまだ満足できない」と思っている人は、どんなにぜいたくな暮らしをしていても心は貧しい。「もっと、もっと」という思いにかき乱され、いつまで経っても心は枯渇感に支配され、幸福感が得られない。そういうことです。