建設需要の増加を追い風に最高益を更新した竹中工務店。一方で、残業規制や国内の建設需要の見通し、海外展開の成否など課題は多い。創業家以外では初めてのトップである宮下正裕社長に聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)
──2016年度(同年12月期通期)決算は、連結純利益が前年度比39.3%増の614億円と過去最高を更新しました。好業績の要因を教えてください。
ベースにはもちろん、建設業界の市場環境の良さがあります。また16年度は、資材費や労務費が安定的に推移しました。さらに当社はここ数年、事業環境を改善すべく、生産性向上やプロジェクトの良質化に取り組んできました。
例えば当社は、設計施工比率(受注工事に占める設計と施工の両方を請け負う契約の比率)が60~70%台と高めです。設計施工ですと、お客さまのニーズをくみ取り、施工に生かしやすい特徴があります。最近は価格以外の要素を重視するお客さまも多く、有利に作用しました。
──一方で建設業界は、人手不足や残業規制の導入など課題が多く、さらなる生産性の向上が必要です。竹中としての、具体的な取り組みを教えてください。
生産性の向上については、例えば、在来工法からPC工法(建物の部材を工場で製造するプレキャスト工法)への切り替えです。Jリーグ・ガンバ大阪の本拠地である大阪府の市立吹田サッカースタジアムは、PC工法を多用することで建設コストを抑え、総工費は約140億円となりました。