塩崎均
中央公論新社
210ページ
780円(税別)
ため息が出た。大学人として、である。うまくいっている大学には、それだけの理由があるということがよくわかった。今をときめく近大、近畿大学の本である。関西圏以外で近大の知名度と評価はどれくらいなのだろう。しかし、いまや、いくつもの指標で、押しも押されもせぬ日本の私立大学の雄であることは間違いない。
少し前まで、近大のイメージといえば、ちょっと垢抜けしないバンカラというところだった。卒業生として思い浮かぶのは、元大関・朝潮太郎の高砂親方であり、浪速のロッキーの異名をとった赤井英和であったから、およそおわかりいただけるだろう。しかし、つんく♂率いるシャ乱Qが出だしたころから少しずつイメージがかわってきた。
今ではあたりまえになっているが、独自に新聞広告を出したり、駅にポスターを掲示したりするのを最初に始めた大学は近大だそうだ。いまや、毎年、近大のお正月の新聞広告や、電車で掲示される入試広告を見るのが楽しみだ。赤井英和も「近大をぶっ壊す。」のポスターに登場している。この力強い拳が赤井のものなのである。
入学式が
ド派手な理由
つんく♂がプロデュースする入学式がド派手なのも有名である。派手すぎるという批判もあるが、ちゃんとした理由があるという。第一志望でなく近大に来る学生や志望学部以外の学部に入学した学生もいるけれど、そういった「不本意入学生」のモチベーションをあげるためにおこなわれているのだ。なるほどね。
その入学式では、オーディションを勝ち抜いた現役女子学生による『KINDAI GIRLS』が花を添える。つんく♂プロデュースのMVまで作られていて、えらくレベルが高い。これ見たら、入学したくなるわなぁ。二年前の卒業式では、堀江貴文がスピーチをしているが、これもすごい。「今を生きろ」と締めくくるメッセージは、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学におけるあの有名なスピーチに匹敵するほどだ。