日本のCSR業界は
従業員のことを本気で考えているか

 しかし、どうも日本のCSR業界の議論を見ていると、このような階級闘争史観に欠けているように思える。だから、労働者に対する視点があまりない。それが証拠に、クロネコヤマトがAmazonの即日配達から撤退するニュースを絶賛する声が、CSR業界からはあまり聞こえてこない。従業員の負担軽減のために、最大顧客との取引停止も辞さないという経営判断は、CSR的に言っても大英断だと思うのだが、これを絶賛する言論はあまり聞こえてこないのは、やはり日本のCSR業界が従業員のことを本気で考えていないからだと思う。

 ちなみに以前から僕は、CSR関係の講演をする時に「御社のCSRは、非正規雇用のシングルマザーにとって何を意味するのですか?」と問うている。しかし、たいていの場合、参加者はその問いの意味がわからずキョトンとする。

 僕がなぜ、CSRの話に非正規雇用のシングルマザーのことを持ち出すのかというと、非正規雇用のシングルマザーというのは、ある意味でこの日本の企業社会では最も弱い立場の人たちだと思うからだ。障害者にはある一定の雇用義務はあるが、シングルマザーにはそんなものはない。幼い子どもが熱を出した時に「すみませんが、子どもを病院に連れて行くので、今日は少し遅れます」と会社に電話したら、首を切られたりする。ニュースで報じられるのでご存じの方も多いと思うが、日本のシングルマザーの半数以上が貧困だそうだ。そういう弱い立場の人たちにとって、企業が行っているホッキョクグマや熱帯雨林を救うCSR活動がどのような意味を持つのか――ということなのだが、こうした僕の問いに対し、企業からまともな回答をもらったことは一度もない。要するに、考えたこともないということだが、それはCSR業界の欺瞞だと思う。

 欺瞞と言えば余談になるが、東日本大震災の時に東京のオフィスのスタッフを放り出して、自分だけ関西に逃げた経営者がいる。そして、震災の1週間前に雇ったばかりのシングルマザーを、関西からの電話1本で首を切った。当時は東京にいてもガソリンはなくなり、スーパーやコンビニからモノがなくなり、福島の原発もどうなるかわからず、都民は不安に暮らしていた時だ。そうした状況下で、子どもを抱えて逃げることもできないシングルマザーを電話1本で切って捨てたのである。その経営者はCSR業界では有名な人間で、今でも平気で企業の社会的責任がどうのこうのと宣っている。そんな姿を見るたびに、本当にこの業界の人間は人を見る目がないなぁと思うのだが、閑話休題。

アイドルグループに学ぶべき理由

 というわけで、NPO業界もCSR業界も独善に陥っているからこそ、若者の社会貢献熱が冷めていっているのではないかと思う。だから僕は、社会貢献業界の人たちは一度、「欅坂46」というアイドルグループに向き合ってみたほうがいいと思っている。CSR/社会貢献とアイドルグループに何の関係があるのか、と疑問に思うようではダメなのだ。社会貢献もCSRもメッセージ性が重要だが、そのメッセージ性をいかにメジャーな世界で展開するかを考えた場合、欅坂46には学ぶべきことが非常に多い。

 知らない人はわからないと思うが、欅坂46はAKB48のたんなる派生グループではない。日本のアイドル史上で初めて「メジャーで成功した、メッセージ色の強いアイドルグループ」なのである。デビュー曲の『サイレント・マジョリティ』では、そのメッセージ性とともに、「アイドルなのに笑わない」という表現が、多くのアイドルファンに衝撃を与えた。最新作の『不協和音』はそのタイトルどおり、同調圧力がますます強くなっているこの日本の社会に対する「強力なメッセージソング」である。音もダンスも『サイレント・マジョリティ』からさらに先鋭化し、攻撃性を増している。そして、キッチリとオリコンチャートで1位を獲得している。