史上最年少の新大統領は
フランスを変えられるのか
5月7日に行われたフランス大統領選の決選投票では、中道派En Marche!のエマニュエル・マクロン候補が得票率66.1%を獲得し、極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン候補(同33.9%)を退け、史上最年少(39歳)のフランス大統領に決定した。
決選投票も事前の世論調査との乖離は少なく、マクロン候補有利の下馬評から変わらなかったと言える。マクロン候補は、キリスト教民主主義の地盤や、伝統的に社会党支持の強い地方、アッパーミドル階層の多い郊外を中心に支持を集めた。英国のEU加盟継続の是非を巡る国民投票、米国の大統領選と、世論調査の信頼性が揺らぐような選挙が続いていたが、フランスの世論調査は軒並み的確な見通しを挙げていたことになる。
ルペン候補は善戦したものの、決選投票前に行なわれた最後のテレビ討論会(5月3日)で精彩を欠いたことが失速を確実なものにした。両候補とも見苦しいまでに激論を交わしたものの、視聴者の多くは、持論であったユーロ離脱を急遽撤回し、新フランスフランの導入と併用させるなどといったぶれを見せ、個人攻撃に終始し政策論議を避けたルペン候補への懸念を強めた。フランスに不安定さをもたらし、国を分断させる可能性があるとルペン候補が判断され、「極右の暴走を食い止められるのはマクロン候補だけ」という空気が広まり、支持を伸ばしたと言われる。
ただルペン候補が、過激な人種差別主義の政党と見られてきた国民戦線をより穏健なイメージに変え、2002年決選投票に挑んだ、父であり国民戦線創立者であるジャンマリ―・ルペン氏の約2倍となる1064万票を獲得したことを評価する声は多い。
また今回、決選投票でマクロン候補を支持した多くの有権者は、真にマクロン候補を第一希望として支持したわけではなく、ルペン候補に比べて「どちらかといえば」「しかたなく選択した」といった消極的な姿勢が目立ったことも確かと言える。
ルペン候補の敗退は
ポピュリズムの失速か?
開票直後、速やかに敗北宣言したルペン候補は、最大野党の党首として活動することと、国民戦線の躍進を誓った。そのルペン候補に対し、欧州ポピュリズム政党の代表らは続々とエールを送っている。
3月のオランダの議会選でポピュリズム政党である自由党が第一党の座を逃したことに続き、今回のフランス大統領選決選投票でもルペン候補が敗退したことを受け、ポピュリズム政党の失速と見る向きもある。しかし第1回投票では、グローバル化に反対するルペン候補、メランション候補だけでなく、反資本主義・共産主義のアルトー候補、ブトー候補、EU懐疑派であるデュポン・エニャン候補らの得票率を合わせると、ポピュリズム政党の得票率は全体の半数近くにまで達した。