近年、日本国内でも注目を集めているピープルアナリティクスであるが、その発祥元であるアメリカ・イギリスなどの欧米先進国でも更なる進化を遂げ続け、その注目度合いは、全世界的に更なる広がりをみせている。ここ数ヵ月の動きで言えば、3月末には米国のペンシルバニア大でPeople Analytics Conferenceが開催され、世界各国から約500名の参加者を集めた。また、4月末にはロンドンでもPeople Analytics Worldと呼ばれるカンファレンスが開かれ、先進的にアナリティクスに取り組む20社を超える事業会社や学術機関による講演などが行われている。
一方で、日本国内でもここ数年でピープルアナリティクスに関するさまざまな講演や記事を見かけるようになったが、その実情はどのようなものなのだろうか。PwCによる連載の第4回目となる本稿では、日本最大級の人事向けポータルサイト「HRプロ」を運営するProFuture株式会社代表取締役であり、HR総研所長を務める寺澤康介氏に、日本国内におけるピープルアナリティクスの動向について聞いた。
ピープルアナリティクスに対する関心は
2016年を境に急速に拡大
HR総研所長 寺澤康介(てらざわ・こうすけ)
1986年慶應義塾大学文学部を卒業後、就職情報会社役員などを経て、2007年に採用プロドットコム株式会社設立(10年にHRプロ、15年にProFutureに社名変更)。代表取締役社長に就任し現在に至る。中立的な視点で人事関連の調査研究を行うHR総研を持ち、企業2万5千社以上、約7万人が登録する日本最大級の人事向けポータルサイト「HRプロ」を運営。その他、日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」「HRテクノロジーサミット」、経営層向け情報サイト「経営プロ」などを運営
北崎 まず、日本国内でのピープルアナリティクスに関する日本国内での動向をお伺いしたいのですが、さまざまな人事に関する情報が集約される「HRプロ」の運営会社の代表として、ここ数年におけるピープルアナリティクスの注目度の変化を、寺澤さんはどのようにお感じですか。
寺澤 ピープルアナリティクスやHRテクノロジーといった分野に関する企業の関心度はここ1~2年で急速に高まっていると感じています。印象的であったのは、2015年5月に当社が開催したHRサミット(人事カンファレンス)では、こういった分野に関する興味は一部の企業に限られていましたが、2016年の同サミットでは大手企業を中心に多くの企業が関心を寄せるテーマとなり、講演への申し込み企業数が2015年と比較して約2.5倍に増えたことです。実際に、HRサミットの中で取り上げるテーマの中でアナリティクスやテクノロジー関連のテーマが占める割合も、2015年と比較すると倍以上に増加しています。また、講演に参加する方が人事部門の方だけでなく、経営企画部門やIT部門の方も増えてきていることも特徴として挙げられます。