無視できない
上場廃止のマグニチュード

 株式市場への上場廃止は、社会の公器としての企業がその負託に応えられなくなった事態だといえる。踏み込んで考えれば、その企業が社会に受け入れられなくなってしまったということだ。

 上場廃止が決まった企業は整理銘柄に指定される。原則として1ヵ月の間、整理銘柄として取引され、その後、上場が廃止される。

 仮に東芝の上場廃止が決まれば、日本の経済・金融市場には無視できない影響があるだろう。東芝株は国内外の機関投資家などに保有されている。目下、大株主には大きな変動がない。一部には、上場廃止を懸念しつつも最悪の事態は回避できると考える投資家もいるようだ。自分は周りより高値で売り抜けると過信する投資家もいるだろう。東芝は日本を代表する名門企業だ。政府も経営動向を注視している。最終的な政府の支援などを当てにする投資家もいるかもしれない。

 だから上場廃止が避けられないとなると、失望や混乱は免れないだろう。“すわ、戦じゃ!”と言わんばかりに東芝株を手放そうとする投資家が増える恐れがある。売りが売りを呼んで、株式市場全体が混乱に陥りかねない。

 それは、“東芝ショック”というべき展開を引き起こすかもしれない。株価の下落、極端な悲観論が消費者や企業経営者の心理にマイナスの影響を与え、景気への懸念を高めるかもしれない。

 一般的に、株式の上場は資金調達の円滑化、企業の社会的な信用力の向上につながるといわれる。東芝の経営再建を考えた時、上場廃止は社債発行、株式発行などの多様な資金チャネルの喪失につながる。それは今後の資金調達コストを上昇させ、東芝自身にとっても経営再建の足かせとなる恐れもある。

半導体事業売却は両刃の剣
中長期の競争力をいかに高めるか

 こう考えると、上場の廃止は是非とも防がねばならない。その方策は、同社が資金を確保して、自己資本を増強し債務超過を解消することだ。その上で内部統制の体制を強化するなど、東証や投資家、取引先など様々なステークホルダーの理解・信用の獲得につなげる取り組みが不可欠である。

 自己資本を引き上げるために、半導体メモリー事業の売却が進められようとしている。東芝は当該事業には2兆円を上回る価値があると考えている。複数の企業や買収ファンドが事業の買収に名乗りを上げている。

 2017年度中に東芝が買い手と合意すれば、上場廃止は回避可能と考えられる。それがまとまれば、主要行から資金面での協力も取り付けやすくなるだろう。ただ、東芝の経営陣からは売却先の選定が遅れるシナリオを念頭に置いた発言も出ており、先行きは不透明だ。より本質的な問題は、半導体事業の売却が東芝という企業の中長期的な競争力の引き上げに資するか否かだ。事業の切り売りや人員のリストラによって資金を確保できれば、当面の上場は維持できるかもしれない。