事業を積極的に多角化し、売上高が9兆円を超える日本を代表する企業となった、ソフトバンクグループ。時価総額200兆円の実現に向けて社内の改革はどのように行われているのか。働き方改革の本質や活躍し続ける人材を育成する秘訣について、ソフトバンクグループ執行役員 管理統括兼人事部長であり、ソフトバンクグループの中核企業であるソフトバンク常務執行役員 人事総務統括の青野史寛氏に聞いた。(聞き手/多田洋祐・ビズリーチ取締役・キャリアカンパニー長)

働き方改革の本質を見失うと日本は終わる

グループ会社5000社を目指すソフトバンクの「人事制度の作り方」青野史寛・ソフトバンクグループ執行役員 管理統括兼人事部長

多田 継続して成長してきたソフトバンクですが、企業の成長に必要な人材をどのように定義していますか。

青野 私がソフトバンクに来て12年です。そのなかで言えるのは、事業ドメインをはじめとした変化する環境にどう対応するかが重要だということです。パソコン用パッケージソフトの卸売業から開始して、出版、インターネット、モバイル通信など、ソフトバンクグループは創業以来、何度も事業ドメインを変え、近年ではロボット、エネルギー事業なども手掛けています。それまで出版事業を担当していた社員が、通信を担当することもある会社であり、事業ドメインの変化に合わせて自分の状態を変化させられる柔軟性を持った人材が必要なのです。

多田 時代としても、日本は変化できるかが問われています。その変化の一つが「働き方改革」ですが、貴社ではどのような取り組みをされていますか。

青野 当然のことながら、残業をはじめとした過重労働の削減については、当社でもずっと取り組んできました。ITの進化によって作業量が少なくなり、業務が効率化していくなかで、仕事の仕方や働き方を変えていかなければいけないと数年前から考え、社員にそれを伝えてきました。

 私が少し危惧しているのが、「働き方改革=過重労働削減」という単純な構図になっていることです。2017年の初めには各社が「早く家に帰りましょう」というメッセージを発表されていた。ぞくっときましたね。このままでは日本が終わってしまうと思いました。

多田 「日本が終わってしまう」とは、どういうことでしょう?

青野 早く帰ることでできた時間を「どう使うのか」が重要で、会社としてはそれと併せたメッセージを出さなければいけないと思いました。

 これからの時代はクリエイティブな仕事しか残らないとも言われています。そうなると、家族と過ごすのもよいけれど、家にこもっているだけではなく、どれだけ外に吸収しにいけるかが大事になるのではないでしょうか。業務の効率化などで生まれた時間を将来のために使えるかどうかが肝心だと考えており、それが2017年、ソフトバンクが掲げている「Smart & Fun!」へとつながります。自分への再投資をして、仕事を楽しめるようになってほしいというのがソフトバンクの考え方です。さらに、プレミアムフライデーも導入し、「Smart & Fun!支援金」として全社員に月1万円を2年間支給することにしました。自分への投資をしようという、会社からのメッセージです。