地方や非正規の不満が溜まれば
今後は日本でも起こり得る

──日本の現状をどう見ますか。

「大阪維新」は、代表だった橋下徹氏が、公務員や労働組合を既得権益層として攻撃したり、「大阪都構想」を直接、住民投票で決めようとしたりするなど、ポピュリズム的な手法で勢力を伸ばした。今の東京で起きている「小池ブーム」も同じで、都議会などを牛耳ってきた既得権益層を批判し、既成政党に不信感を持つ層の支持を得ている。

 欧州の場合、第一期から10年ほど経過した後、第二期のポピュリズムが起きている。日本でも、すでに“温床”となる格差は、米国ほど極端ではないにしても拡大しているし、東京などの大都市と過疎化が進む地方の二極化が進み、「取り残された」と感じている層が増えている。

 単に所得の格差だけではなく、片や東京のように世界中から企業や働き手が集まって国際化、多民族化が進み、英語でビジネスをしてライフスタイルも自由でという社会と、過疎化、高齢化が進む地方との質的な落差も大きくなっている。かつて大都市は、地方から流入した工業労働者の集まる場所だったから、地方との本質的な差は少なかった。だが、今はいわばエリート層と「置き去りにされた層」との文化的格差がある。

 また働く現場でも、低賃金で昇進や昇格もない非正規社員が約4割に上っている。同じ職場で働いていても、正社員と比べて、非正規社員は将来への展望が限られ、会社との距離感や疎外感は、正社員とは違ったものだ。

 こうした地方や非正規の不満、政治不信を結びつけるような形で、オランダ自由党のウィルデスのようなカリスマ性を持った指導者が日本にも出てきたら、日本も今の欧米のようなポピュリズムが高まる恐れがある。

 安倍政権はそのあたりを薄々感じているのだろう。「働き方改革」を進め、「同一労働同一賃金」に取り組んでいるのは、非正規層の不満を意識したものだ。

 また、アベノミクス自体も当面の間は、誰も痛みを伴わない国債増発による財政出動と超金融緩和だ。ポピュリズムを「人気取り的政治」と呼ぶ人もいるが、そのような意味でポピュリズムを理解するなら、消費増税を2回も先送りしているし、安倍氏もポピュリストなのかもしれない。しかし、高齢化が進み、社会保障が今以上に充実を求められたり、再分配政策をきちんとせざるを得なくなったりすれば、財政ばらまき型の政治手法はもたなくなる。

 日本が欧米と違うのは、移民問題がそれほど意識されていないことだ。非正規社員が安い労働力として、事実上の移民の代わりをしている面もある。だが、介護現場などでの人手不足を考えると、外国人労働者の受け入れは今後、進むだろう。問題は、不況期に職を失った外国人が、社会保障に依存しているという状況がことさらに強調された時に、日本社会でどういった反応が起きるかだ。

 格差が放置され、多くの人の所得が伸び悩んで社会が余裕を失いつつある状況では、「反外国人」「反移民」が人々を政治的にまとめあげる主張として力を持つ可能性は今後、十分にあるのではないか。