端的に言って、筆者自身も、これからの自分自身の「老後」をどのように迎えたらいいのかについて、自信のある結論を持っている訳ではない。以下に述べる諸々は、多くは筆者の家の実例だが、読者に対しては、「こうしたらいいのではないか」という一つの仮説にすぎない。

 老後に関しては、(a)住居・生活、(b)介護、(c)お墓・葬式、(d)相続、といった問題があるが、筆者の現時点での考え方と、山崎家で実際に行っているあれこれを率直にご紹介する。

生活はシンプルに

 まず、「老後」に辿り着く前の方針として、「(1)なるべく長く働く」のが、筆者の好みでもあるし(その方が、楽しいから)、同時に、経済的な必要性でもある。いわゆる「人生100年時代」の少し手前の95歳くらいまでを「老後」として経済的な計算をしてみると、65歳で引退するのでは、将来を賄うのに必要な蓄えを持つための現役時代の必要貯蓄率が、サラリーマンの場合で手取り所得の2割前後必要になる(現役時代の「必要貯蓄率」については、新刊の拙著「人生にお金はいくら必要か」(東洋経済新報社)をご参照ください)。

「手取り所得の2割」は、不可能ではないが、強い意志力が必要な貯蓄水準だ。もちろん個人差があるし、働くペースを体力に応じて調節することになるが、75歳くらいまでは、元気で働く力がある人が多い。北海道で小さな会社を経営していた筆者の父はおおよそそのくらいまで働いたし、筆者も「75歳」くらいを目処として考えている。多くの場合、会社が働く場を用意してくれるのは65歳くらいまでなので、かなり早い時期から、自分で将来の準備をしておく必要がある(だいたい45歳くらいから考え始めるべきだろう)。

 さて、老後の生活で重要なポイントは住居だが、「(2)住居は縮小し、モノを減らしてシンプルに暮らす」のが基本的な方針だ。子育てに適した家は、子育てが終わると広すぎる。また、家が広いとモノが多くなるので、生活上の負担が大きい。適切なサイズの家に住み替えて、同時に、生活に必要なモノに所有物を絞り込むことを意識したい。

 加えて、「(3)便利な場所に暮らす」ことを意識したい。交通の不便な場所に暮らすと、出かけるのも、他人を招くのも億劫になる。人との関わりが減るのは、つまらないし、人間が衰えやすくなるように思う。