相続は早めに決める

 相続は、「争族」という言葉があるくらいで、なかなか厄介な問題だ。山崎家の場合、筆者の親も、筆者自身も、相続税対策を本格的に考えなければならないような財産があるわけではないのだが、ルールとしては「(6)相続は、本人のアタマがしっかりしているうちに、明確に決める」ことをルールとしている。財産の所在(金融機関と口座の在処)、その時点の大まかな額、老後の支出の大まかな予定、そして、残った財産の分け方のルールを、財産を残す人の意識と意志がしっかりしているうちに決めておくことが大事だ。必要に応じて記録に残しておくといいし、もちろん、正式な遺言とする手続きを踏んでもいい(「争族」の可能性が少しでもあれば、正式な遺言をお勧めする)。

 冒頭にも述べたように、自分が認知症を患ったり、死んだりした後のことを考えるのは愉快ではないし、自分の意思がはっきりしているうちは、財産を自分で扱いたいと思うのが人情だ。

 筆者の父も、介護を要する状態になる直前まで、証券会社で株式などの売買をしていたし、複数の銀行に預金口座があった。

 証券口座は存在が分かっていたので(「中身」には問題があったものの)大きな問題はなかったのだが、銀行の預金口座については、資金の動きを知りたい時期から10年以上が経過していて(データの法的保管期限は10年なので、それ以上前の資金の動きは「記録がない」ことにされる場合が多い)、父が介護施設に入ってから、家族が動きを追い切れないお金があった。

 晩年の父は、緩やかに衰えていて、亡くなる3年前くらいまで一人で外出できたのだが、ある時、一人での外出中に転倒して頭部を強打し、入院して、一気に衰えた。幸い、彼は、亡くなるその日まで意識がはっきりしていたのだが、記憶や認識はおぼつかなくなっていた。意思が表明できなくなったり、いきなり亡くなったりする可能性は、高齢者の誰にでもある。

 後にもめ事を残さないように、そして、財産の行方が分からなくなることがないように、しっかりけじめを付けておくことが大事だ。

 もちろん、これは、筆者自身も心掛けておかねばならない問題でもある。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)