とてつもない成功をつかむための3つの教え

 そう、レイラの成功物語からはたくさんの教訓が学べる。

 第1に、「世界を新鮮な目で見直すことの大切さ」である。

 ウォルマートを創業したサム・ウォルトンは、こう述べた。「みなが同じ方向に進んでいるときに、正反対の方向に進めば、ニッチ市場が見つかる可能性が高い」と。みながヘアケア製品を販売していたときに、レイラは“女性の自尊心”を売ったのである。レイラは、自分が開拓したニッチ市場を「リップスティック心理学」と呼んだ。リップスティックを塗ったり、くせ毛を直したりするようなちょっとした手間で自分に自信を持てる、という女性の心理をレイラは見抜いたのである。

 優れたアイデアとはたいてい、まだ誰も気づいていないニーズを満たすものである。

 レイラの物語から学べる第2の教訓は、「リスクに立ち向かうときの障害には、心理的な要素が大きい」という点である。

 成功を阻む最大の要因は、構造的な障壁や文化的な障壁ではない。それは精神的、感情的な障壁である。行く先々で誰かが、いや、誰もが、あなたとあなたのアイデアを「クレイジー」と呼ぶ。だがイノベーターの仕事とは、そのような悲観論者の意見をものともせずに前へ進みつづけることだ。レイラは消え入りそうな声で話す、引っ込み思案な女性だった。大胆な行動にも、誰かと議論することにも、自分の考えをはっきり述べることにも慣れていなかった。だから、おおぜいの女性客に自信を与える前に、まずは自分のなかに自信を見つけ出す必要があった。

 そして第3の教訓は、「リスクを負う者は、めったにひとりでは行動しない」という点である。

 現状打破を目論む者には支援が必要だ。金銭的な支援に限らない。もちろん、金銭的支援はどんなときにも大切だが、それ以上に重要なのはアドバイスである。恐怖を克服し、難しい決断を下し、気が遠くなりそうに思える大きな仕事を、何とかひとつずつ手をつけられそうな小さな作業に分けるためのアドバイスである。

 マイクロチップの共同開発者であり、インテルの共同創業者でもあるロバート・ノイスは、“シリコンバレーの主”の異名を取る人物である。スティーブ・ジョブズは事業を立ち上げたとき、ノイスに相談を持ちかけた。いかにもジョブズらしい逸話だが、彼は極端な行動に出た。招かれてもいないのに、バイクに乗ってしょっちゅうノイスの自宅に押しかけ、深夜にもかかわらず電話をかけつづけた。我慢も限界に達したノイスは、とうとう妻にこう洩らしたという。「今度、ヤツが電話をかけてきたら、もう絶対に受話器は取らないぞ!」

 もちろん、ノイスはいつでも電話に出た。アントレプレナー(起業家)は、どんなときでも、必ず何らかの方法を見つけ出すものなのだ