パワハラ上司はなぜ発生するのか
日本のオヤジが抱える「低すぎる自尊心」

 だいたい、こうした暴力行為を延々とやってしまう人物はヒマです。本当に不要な部下だと思うのなら、さっさと外に出す手はずを整えたらいいはずです。2時間も費やして怒鳴り散らすなどというのは、単にイチャモンを付けていたぶり、遊んでいるだけ。悪辣なヒマつぶしです。

自身も自己嫌悪の苦しみを和らげるべく、仕事に突き進んだ時期があったという安冨教授。しかし、どんな立派な結果を出そうとも、決して苦しみが消えることはなかったのだというPhoto by Kazutoshi Sumitomo Hair&makeup by Chise Fujioka

 もう1つ、重要なのは、こうしたことをしてしまう人の心には、「低すぎる自尊心」という問題があるということです。

 私に言わせれば、他人を貶めてハラスメントをする人の心の中は、自己嫌悪でいっぱいです。

 心の奥底では自分が大嫌いだけど、それを認めるくらいなら死んだ方がマシ。これは誇張でも何でもなく、自己嫌悪に苦しむ人は、本当にそのくらい自分を受け入れ難いのです。この恐ろしい感情から逃げるために、彼らは「立派で上等な自分」像を作り上げることに腐心します。「立派で上等な自分」でいるためには、比較対象としての「ダメな人」がいなければなりません。

 これが、人間社会のどこででも見られる暴力の根源です。いじめも然り、差別も然り。今で言うなら、ネット上で誹謗中傷を書き込んじゃう人たちもそうですし、昨年、神奈川県相模原市の障害者施設で起きた大量殺傷事件の加害者の心の中にも、こうした構造があったのではないかと思います。

 誰かを差別し、笑い者にし、徹底的に貶める。そうしている間だけ、自分が「立派で上等」になれたような錯覚に浸れる。とても傲慢で、強そうに見えるハラッサー(嫌がらせをする人)たちは、実はこんなに脆くも空しい心理構造を抱えているのです。