ただ、超一流を除くと、将棋や囲碁のような頭脳競技では、若い相手の方が「勝ちにくい」場合が多く、藤井四段は決して楽な相手に連勝を重ねたわけではない。

 いわゆるアマチュアである筆者(「強くないアマ四段」くらいだ)がプロの将棋の内容を云々するのは気が引けるが、藤井四段の将棋は単に結果が価値なだけではなく、勝ち方がいかにも強い。

 連勝中に2〜3局、危ない将棋はあったように思う。連勝記録を更新した対増田四段戦でもそうだったが、中盤から終盤(玉、いわゆる王将が、詰むか詰まないかが問題になる勝負が決する段階)の入口にかけての勝負所で、解説のプロが「難しい」(≒先手と後手とどちらが優勢か判別しがたい)と判断するような局面から、相手の玉を的確に追い詰める道筋を探し出し、最後には差を開いて勝負をつけるような勝ち方が多い。

 「読んでいる量と正確さが違うのではないか」、「見えている世界が違うのではないか」と能力そのものの差を感じさせるような、相手にとっては辛い勝ち方だ。また、詰め将棋解答選手権で三連覇という、こちらも驚異の実績が持つ「心理的効果」も、将棋というメンタル要素の大きなゲームにあっては絶大なはずだ。

 そして、現在、14歳の中学三年生なのだ。

 プロの将棋は残酷な世界で、プロになった年齢の若さと、将来上りつめるピークの地位の高さとの間には、明らかで強い相関がある。自分よりも若い相手に、力負けのような形で負けると、相手は相当精神的に厳しい。

AIとの対比で見ると「遅れてきた天才」か

 しかし、近年よく話題になる「AI」こと将棋ソフトには、藤井四段といえども勝てないだろうと見る人が多かろう。先般行われた、「叡王戦」で優勝した人間(佐藤天彦・現名人)と将棋ソフトponannzaの勝負では、圧倒的にponannzaが強かった。

 藤井聡太四段は現在、すでにプロ将棋界のトップクラスに迫る強さを持っているように見えるが(おそらく、連勝しながらより強くなっている)、過去の棋士を見て最も強いと思えるのは、20代の半ばから後半くらいであることが多い。