貸出し縮小計画は「非国民」
2011年度の第一四半期が終わり、8月は下期を視野に含む段階になってきた。1990年代以降の銀行を中心とした金融機関は毎年のように、この時期に下期に向け年度当初の計画修正を行なって有価証券運用に比重をかけることを繰り返してきた。
今回は、その背景を考えながら、現在、日本の金融機関が置かれた運用環境を考えてみよう。
日本の金融機関は、年度当初の計画では常に、金融機関としての「本業」である貸出しの増加計画を設定してきた。これは日本の銀行に限ることではないが、銀行にとって最大の資産項目であり、いわば、売り上げの柱である分野の計画を前年以下にすることは、「許されない」ことであり、それは企業として組織の論理としては「非国民的」なものとして見られやすかった。
しかし、現実には日本の金融機関の貸出しは1990年台後半以降、2000年代半ばの一時期を除き、常に前年比マイナスが続いた。日本の銀行の貸出し減少の背景には、90年代後半には銀行の資本不足に伴う貸し渋りの側面も存在した。
しかし、多くの場合、銀行側、供給サイドの側面よりもむしろ、需要サイド、すなわち過剰債務が指摘されてきた企業のバランスシート調整に伴うものだった。また、日本の先行き期待低下に伴う、レバレッジ縮小による内需縮小によるものだった。
1990年台からのマネーフローの大転換
マネーフローで見て、金融とは部門別で資金余剰セクターの資金を資金不足セクターにつなぐ機能を意味する。ここで、家計、企業、政府、海外の4部門に単純化して、部門別の資金過不足で資金フローを考えることにする。