未訳の最新ビジネス洋書のエッセンスが詰まった書評レポートを、PDFファイルで閲覧・ダウンロード提供する本連載。今回取り上げるのは、『シニア世代の市場』です。(書評レポート提供/エグゼクティブブックサマリー

高齢者ビジネス、富裕層ビジネスで陥りがちな罠<br />『シニア世代の市場~マーケティング戦略やブランド構築戦略を年齢中立的にするべき理由』

「高齢化向けビジネス」とは
一体どのようなものなのか?

 メディア業界においてテレビ視聴率を意識した番組構成、またはそれにまつわるCMは、よく考えてみるとそのほとんどが、最も影響力のある時間帯には若年層向けの内容で固められている場合が多いと言えるでしょう。マーケティング上、大きくは15歳から34歳を若年層とし、一般的にはその層に伴ったターゲティングを戦略としています。

 一方で「高齢化」について考えたとき、日本はもとより、世界レベルで人口は高齢化の一途を辿っており、ほとんどの先進国で、共通の問題として取り上げられています。

 この高齢化層、実はゴールデンタイムのテレビやラジオの視聴者数の半分以上を占めているにもかかわらず、実際にはその層に該当する番組やCMの内容は5%程度であることが判明しています。

 本書では、時代とともにいつしかでき上がった、「PRの鉄則」という誤認識が生む需要と供給のアンバランスについて警鐘を鳴らすとともに、深刻化する高齢化社会にメスを入れるべく、より良い経済発展を視野に入れた大変わかりやすい解説がされています。

 高齢者向けの新しい商品やサービスをつくる上で、特にマーケターが最も陥りやすい呪縛化したPRの鉄則について、たとえば以下のように述べています。

・従来のメディアアプローチ法に執着している
・社内ミーティング時に高齢者(社員)がいるだけで最適なアイデアが湧き出ると信じている
・高齢者ではなく日常、自分たちが不便に感じるいることにすら気がついていない

 このことからも「高齢化ビジネス」というのはラベル化された全般論が当てはまらないもの、つまり高齢者を一個人として捉え、その個たる特徴を深く追求することで初めて霧が晴れ高齢化マーケティングという視界が広がるものであると言えるのではないでしょうか。

 そして著者ディック・ストラウドは次のように述べています。

「50歳以上の年齢層は最も裕福でハイペースに消費を行ってくれる唯一のグループなのです。しかしマーケターが安易に年齢だけでターゲット選択をするとマーケティングすべてが台無しとなり、ビジネスそのものが大やけどをします」

 アマゾンレビューでは、ビジネスの専門家達により本書の凄みについての数多くの記載があり、同氏は、このようなニッチと言われる業界の草分け的存在であると高く評価されています。

 年齢に固執せず、時としてそれを無視するマーケティングを主唱する本書を、高齢化が世界のマーケティングにどう影響を与えるのか学びたいと願う全ての人にお勧めします。

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