GM復活の真相
米中西部時間2011年8月10日(水)午前8時過ぎ。
General Motors (以下、GM)のアーリントン工場(テキサス州アーリントン市)の組み立てライン脇に、ステージが設けられ、その周りを約500人が囲んだ。彼らはこの地で、シボレー「タホ」、キャデラック「エスカレード」など、フルサイズSUVを製造しているGM社員だ。
ステージ上には、グローバルクオリティ担当のテリー・ウォイカオスキー筆頭副社長の姿。同氏は、顧客満足度調査で世界的に有名な調査・コンサルティング会社、JDパワーから贈られた盾を手に、こう叫んだ。
「JDパワー2011年イニシャルクオリティ、大型プレミアムクロスオーバー・SUV部門第1位は、3年連続でキャデラック・エスカレードだ!」。
工場内は拍手喝さいに沸いた。
さらに、「大型クロスオーバー・SUV部門第1位は、こちらも3年連続でシボレー・タホだ!」と続くと、拍手の音はいっそう響き渡り、「しかも同部門第2位はGMCユーコン、第3位はシボレーサバーバン。これら全て、ここであなた方が作り上げたプロダクトだ!」と同氏が謳い上げると、周囲の社員たちの熱気は最高潮に達した。
アーリントン工場は北米に19箇所(米国12、カナダ3、メキシコ4)あるGM組み立て工場のうち、製造台数では最大級の規模を誇る。2011年7月の生産実績を見ると、シボレー「タホ」9634台、GMC「ユーコン」2498台、キャデラック「エスカレード」906台(これら3車はいわゆる兄弟車で、外観の一部や内装で若干の違いがあるだけ)のほか、同3モデルの全長を伸ばした車種、シボレー「サバーバン」5185台、GMC「ユーコンXL」2616台、キャデラック「エスカレードESV」575台を製造している。
この日は、NY株式市場でダウ平均が過去6番目となる大幅な下げ幅(営業日比634ドル76セント安)を記録した翌々日だ。さらにこの日もダウ平均は寄り付きから乱高下の兆しがあり、アメリカの景気の先行きに不透明感が増していた。だが、ここに集まったGMの社員たちの表情に暗さは感じられなかった。なぜなら、6日前に公表された同社の2011年第2四半期の決算は6期連続で黒字となったからだ(純利益は25億ドル)。また、2011年上期の世界販売台数は453万6000台となり、世界1位に返り咲いた。2位は独フォルクスワーゲンで412万9000台、トヨタは東日本大震災に伴う生産と輸出の大幅な減少が響き、371万5000台で3位に後退した。