金融緩和の影響で、マンション価格は高くなった。東京都区部で2014年以前に購入した人のほとんどが、購入価格よりも値上がりしているはずだ。しかし、価格は2016年には横ばいとなり、そのうち下がるのではないかという漠然とした不安に駆られる人も増えた。
自宅は個人の最も大きな資産であるから、マンション購入を考える人は「買い時」であるか否かを判断するための材料を探すが、そのとき出てくるのは「売れ行き」の話ばかりだ。これは購入する際の相談を販売側にしているという、矛盾を抱えているに等しい。それを解決するには、購入者側の情報を集約するしかない。それは、「購入者の、購入者による、購入者のための」市況把握になるかもしれない。
需要側の意識が反映されないまま
供給側の論理で売られるマンション
マンションの供給戸数や契約率については、よくニュースになる。しかし、これは市場における供給側の行動と意識を推し図ることはできるが、需要側のそれは無視されている。実際の販売現場では、来場者の購入意思を確認しながら、倍率1倍になるように供給する戸数を決めている。つまり、契約率はこの10年、ほとんど70%前後で動かない。売れる分だけ供給しているのだから当たり前である。
こうした現状にもかかわらず、「初月契約率が70%を割り込むと売れ行きが悪い」などと言ってもあまり意味がない。3000戸の供給×契約率67%=2000戸の契約戸数になるか、2500戸の供給×契約率80%=2000戸の契約戸数になるかは、売れ行きとしては同じになる。つまり、需要側の動向が供給を決めていると考えた方がいい。