ヌードからスピリチュアルまで、雑誌「anan」の45年間を振り返る雑誌はその時代の傾向、社会の流れを掴むもの。だから雑誌を遡ってみると、時代ごとの社会の移り変わりが見えてくる(写真はイメージです)

 雑誌はその時代のトレンド、社会の流れを掴むもの。だから1冊の雑誌の来歴をたどれば、自ずと、時代ごとの社会の変遷を読み取ることができる…。

 そんな普段とは異なる「雑誌の楽しみ方」をみせてくれるのが本書『ananの嘘』。創刊から45年を迎えた雑誌『anan』(以下、アンアン)の2000号に及ぶ誌面を、『負け犬の遠吠え』他の著者である酒井順子氏が分析した一冊である。

やけに過激なウーマンリブ時代のアンアン

ヌードからスピリチュアルまで、雑誌「anan」の45年間を振り返る『ananの嘘』
酒井順子、マガジンハウス、272ページ 、1300円(税別)

 アンアンが創刊されたのは1970年。当時はまだ「ちょっと働いたら寿退社」という道が一般的だったものの、恋愛結婚する人の割合がお見合い結婚する人の割合を初めて上回り、「自由に恋愛できる時代」に突入したのが、この頃。同時に、ウーマンリブの潮流も世界的に生まれ、「女性はこうあるべき」という規範が大幅に揺らぎはじめていた。

 そんな時代に誕生したアンアンは、やけに過激。おしゃれ有名人のヌードの家族写真を連載するなど、裸の写真が随所に登場するほか、
「太ったってイイじゃない!!」
「チビで、デブで、しあわせです アンアンはチビデブを支持します」
「ことしはレズビアンを体験してみることに決めました」
など、非常にユニークな特集が目白押し。

「一説によれば、ヤセには不感症が多い」と、根も葉もない説を展開したり、「痴漢だってヤセはねらわないヨ」と、やけくそ気味に痩せ型体型の人に対する攻撃性を見せることも…。目を疑うような論調も多いが、それらは当時の社会を包み込んでいた「既成概念にとらわれたくない」「タブーに挑戦したい」という意識を反映したものといえる。

 そんな初期アンアンが取り上げるファッションも、「異性ウケより自分ウケ」「異性におもねらず自分の行きたい道を行く」というスタイル。旅特集でも、「これからの旅はウーマンリブで行こう!」と提唱。