2017年初に対象者を拡大し、ほぼすべての勤労世代が加入できるようになった個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)に加えて、2018年1月から「つみたてNISA(少額投資非課税制度)」が新たに始まることで、勤労世代が投資をするための環境はかなり整ってきたと思います。しかも両制度ともに積立投資を推進する制度であるため、少額からでも簡単に投資を始められる時代に突入したといっても過言ではありません。一方で積立投資を普及させたいあまり、積立投資の効果が誇張されている場合もあるので、前回はあえてそのマイナス面をお伝えすることで、積立投資が万能ではないことを明らかにしました。今回も前回に引き続き積立投資についてお話しします。今回は、金融機関の窓口で積立投資を勧める際に用いられる典型的セールストークを、積立投資の“あるある”として紹介します。ぜひ、本稿を参考にして、“あるある”に遭遇しても惑わされないようにしましょう!

毎月分配型の投資信託と積立投資

 前回説明したように積立投資は、基本的には勤労世代が収入から一定の金額を少しずつ長期間投資に回す手法です。その目的は、退職後の生活資金だったり、教育資金だったりしますが、いずれにしても“今ではなく将来”必要となる多額の資金を準備すべくコツコツ続けるのが積立投資です。今すぐお金が必要ではないので、当然、分配金に対するニーズはなく、むしろしっかり増やすことで目標金額を達成する確率を高めたいと思っている人が多いと思います。

 にもかかわらず、金融機関の窓口では毎月分配型の投資信託を積立投資でお客様に勧めるケースが散見されます。利益のみならず実質的に元本を取り崩して分配金を出すタイプの投資信託を積立投資で販売している場合もあります。これの経済的意味は、積立金を投じたのとほぼ同じタイミングで、それを引き出していることになりますので、まったく無意味ですよね? では、なぜこのような意味のないことが行われているのでしょうか?

 その理由の一つは、金融機関の販売員の多くは、毎月分配型の投資信託を売ることに慣れてしまっており、一番説明しやすい、ゆえに売りやすいということがあるでしょう。より深刻な理由としては、毎月分配型の投資信託が存在する意味、積立投資を行うことの意味を理解せずに勧めているからだと思われます。毎月分配型の投資信託は、年金代わりに毎月何らかの収入を得たいシニアな人に適した商品である一方、積立投資は先ほども述べたように勤労世代が退職後に向けて資産形成していくツールですから、基本的にはこれらが混在することはあり得ないのです。老後のための資産形成を考えている50代のオヤジ世代の皆さんが販売員から積立として毎月分配型を勧められた場合には、今、受け取る必要はなく、むしろしっかり殖やしたいので、毎月分配型以外の投資信託でお勧めはないかと、と切り返すことが重要なのです。