加計問題はまったく別の角度
からの究明・報道が必要

だが、愛媛県の畜産農家の実情を見つめてきた加戸氏は、知事時代に鳥インフルエンザも経験し、獣医師は絶対的に不足していると強調する。少ない人数の獣医師が皆、倒れそうになるまで働いているのを見ながら、加戸氏は獣医学部新設を許さない鉄の規制、獣医師会と文科省をどれだけ恨めしく思ったかしれないと、語る。いちばん強く反対したのが日本獣医師会だと、加戸氏は本当に口惜しそうに語った。

2年前の2015年9月9日、地方創生担当大臣だった石破茂氏を、「日本獣医師政治連盟」委員長の北村直人氏らが訪ねたときの様子が、日本獣医師会のホームページに掲載されている。石破氏の言葉としてこう記されている。

「今回の成長戦略における大学学部の新設の条件については、大変苦慮したが、練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした」

獣医学部新設を絶対に阻むべく、規制を強めたと言っていることが窺える。具体的にはそれは獣医学部新設のハードルを上げてきわめて困難にした「石破4条件」を指すとされている。

石破氏はそのような発言はしていないと、全面的に否定するが、上の引用は日本獣医師会のホームページに石破氏の発言内容として公開されているものだ。真の悪者は獣医師会であり、その獣医師会に石破氏が協力したということを示す資料ではないか。これが事実なら、加計学園問題はまったく別の角度から報道しなければならない。

こうした背景のなかで、加計学園がようやく新設を許可されることになった。それが安倍首相の圧力の結果だと、「朝日新聞」はじめ大半のメディアは安倍批判を強める。果たして安倍首相は不当な圧力を加えたのか。

実際にこの問題を取り扱ったワーキンググループの一員、原氏が説明した。

「絶対にそんなことはありません。獣医学部新設の提案は、新潟市、今治市と京都の綾部市からありました。綾部市は京都産業大学を念頭にしていたのですが、7月14日に正式に提案を撤回しました。新潟は申請自体が具体化していません。結局、充実した案を示したのが今治市と加計学園のチームでした。今治市はもう10年以上も申請を続け、それだけに学部の内容も練り上げていました。ほかの申請者とは熟度がまったく違いますから、彼らが選ばれるのは当然です。安倍首相の個人的思いや友人関係など、個人的条件が入り込む余地などまったくありません」

加戸氏も、国家戦略特区で今治市と加計学園による獣医学部新設が認められたことで「歪んでいた行政が正された」と語り、官邸が圧力で行政を歪めたという前川氏発言を真正面から否定した。加戸氏の指摘からも、行政を歪めた張本人は獣医師会であり、さらに文科省であることが窺える。