なぜ、論理的に語っても相手を説得できないのか

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第27回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『意思決定 12の心得』(PHP文庫)において述べたテーマを取り上げよう。

空回りする熱弁

 今回のテーマは、「なぜ、論理的に語っても相手を説得できないのか」。このテーマについて語ろう。

 前回、「意思決定」の力を身につけるために必要な「直観力」「説得力」「責任力」という「3つの能力」について述べたが、今回は、これらのうち、「説得力」をいかにして身につけるかを述べよう。

 最初に、ある企業の会議の場面から始めよう。

 若いビジネスパーソンが、会議の出席者を前に熱弁をふるっている。出席者は、10名ほどの現場の熟練のマネジャーたちである。

 この若いビジネスパーソンの説明は、実に論理的である。さすがに「若手のホープ」との評価を得ているだけある。配られた資料も、よく準備されたものであり、データにも漏れがない。20分前に始まった説明も、ますます熱を帯び、弁舌さわやかに切れ味を増している。見事なプレゼンテーションといったところだ。

 しかし、よく見ると、出席しているマネジャー諸氏は、誰一人として、この若手ビジネスパーソンの顔を見ていない。皆、手元の資料をパラパラとめくりながら、話を聞いている。いや、どうも「聞いている」のではなく、「聞き流している」ような気配だ。資料についても、いま若手ビジネスパーソンが説明しているのではないページを見ているマネジャーも多い。

 どうも、この若手ビジネスパーソンのプレゼンテーションは、空回りをしているようだ。一体、どうしてしまったのか?