さまざまなサバ料理。どれもおいしそうだ Photo by H.H

 こんがり焼けた大きなサバを器用にほぐしながら、右田社長は小浜のサバの現状を語り始めた。

 鯖街道の起点であり、サバ文化発祥の地として有名な福井県小浜市。かつて若狭のサバは、京の都に献上されるほどの高級食材だった。ところが、大衆魚と言われるようになった現在は、水揚量がピーク時の3000分の1まで激減。実は、小浜のサバのほとんどはノルウェー産や県外産だ。

 地元にとっては憂うべき事態を打開するため、小浜市は地方創生の一環として昨年、「鯖、復活プロジェクト」を始動。小浜湾でサバの養殖事業に取り組み、今年も8000匹の養殖を計画している。

 一方、脂が乗った旬のトロサバをウリにするSABARでも、サバの枯渇は死活問題だ。

「サバは400グラム以上ないと価値が上がらないのですが、いま水揚げされる90%以上は400グラム以下なんです。SABARで使っている500グラム以上のトロサバは1%以下しかない。大半はピンサバと呼ばれるもので、魚のエサや缶詰になるか、二束三文で海外に輸出されます。問題なのは、未成魚の乱獲のせいで卵を産める2歳以上のサバが激減したこと。1985年頃に80万トン近くあった漁獲量は、2015年には56万トンに減りました。このまま小さなサバを取り続けると、価格の高騰のみならず、いずれ市場に流通しなくなります」

右田孝宣社長   Photo by H.H

 そこで、右田社長が考えたのが、自分たちの好みの味覚と脂質と食感に合うサバを育て、ブランドサバとして認定するというもの。「世界マーケットで見れば食用魚の50%は養殖です。ところが、日本での養殖のシェアは25%未満。世界の養殖市場においては0.4%以下というありさまで、日本の養殖業は遅れている」と、右田社長は指摘する。

 とはいえ、天然物を珍重する日本で、養殖のブランドサバは受け入れられるのだろうか。しかも、日本の養殖業が抱える、高額なエサ代問題にも直面。その問題を解決する秘策は、魚の育成に欠かせないビタミンB1を多く含む、ある食材の「副産物」にあった。