8月3日の内閣改造によって、凋落する一方だった支持率が5~10ポイントほど回復。安倍政権は瀬戸際で踏みとどまったかのように見える。だが、衆院の任期も残り1年あまりで、来年9月には自民党総裁選も予定されている。政局の行方は依然として予断を許さない。今後、安倍総理はどのような政策をおこなっていくのか。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。(取材・文/清談社)
安倍内閣が看板政策を
絶えず変えていく狙いとは?
2012年12月の発足の第二次政権以降、安倍官邸は、「女性活躍」、「地方創生」、「一億総活躍」、そして今回の「人づくり革命」と、目玉となる政策を毎回ころころと変更している。このことの意味について鈴木氏が解説する。
「第二次安倍政権は、内閣改造のたびに新しい看板政策を繰り出しています。ですが実は、これらの政策は看板こそ違えど、その中身は大きく変わっていません。ある経産省OBがこうした現状を『船の名前を変えているだけ。中に乗っている積み荷(政策)や、船長(安倍総理)や船員(閣僚)は全然変わっていない』と厳しく評していましたが、まさにその通り。実際は、看板を書き換えることで、何か新しい政策をやっているようなイメージを作り出そうとしていると言ってもいいでしょう」(鈴木氏、以下同)
今回の内閣改造における新しい看板政策は、茂木敏充・経済財政担当大臣が担当する「人づくり革命」だ。幼児教育や高等教育の無償化、社会人教育の推進などをテーマとするもので、8月中に有識者会議『人生100年時代構想会議』を発足させ、来年6月頃を目途に具体的な方向性を打ち出す予定だ。耳慣れない名称でもあり、早くもわかりにくいとの批判が出ている。
「『何をやるものなのかわからない』という批判がすでにありますが、逆に言うと、実はそれこそが政権の狙いかもしれません。というのは、安倍政権の看板政策は、いつも非常に国民運動的な要素を含んでいるんです」
「『地方創生』や『一億総活躍』もそうでしたが、今回掲げる『人づくり革命』も、これから地方を回りながら、何に取り組むのか、担当大臣が各地の議論を掘り起して声を吸い上げていく。国民運動的に政権への期待感や盛り上がりを醸成して、政権への求心力を高めて行くことが狙いの一つと見ていいでしょう。石破茂・元地方創生相も『一億総活躍』が突然出てきたときに『これは国民運動以外の何ものでもない』と指摘していましたね」