ワインの常識に学び
日本酒を“知り尽くす”

 田んぼ(米)やワインに挑戦することが、どう日本酒の未来を創ることにつながるのか。

 久野社長によると、日本酒になくてはならない米には、日本人にとってもあまりに当たり前の存在ゆえに、見えなくなったものがあるという。

「ワインは、ブドウの当たり年の会話が普通にされるのに、なぜか日本酒はまったくそういう話になりません。お米だって毎年まったく違うのに。原材料であるお米に注目して日本酒を語ることで、お客さんの日本酒の見方も変えられると思っています」

 気づいたのは、パリでの活動の最中だ。地元の醸造家たちに「お前も、米を作っているんだろう?」という質問を投げかけられた。

 ワインは、ブドウの栽培にも造り手が積極的に関わるが、日本酒では、米を育てるのは農家で、蔵元はその米を買い上げて酒にする。「醸造酒の世界基準はワイン」、と話す久野社長にとって、そこに大きな違いを感じたのが米作りのきっかけだ。またワイン造りを本場で行なうのも、製造管理や商品の魅力の伝え方などワインに学ぶものが多いと感じるからだ。

「工程に若干の違いはあれど、日本酒も同じ醸造酒。ワインと日本酒の間に異文化のミックスが起これば、日本酒の新しい姿を造りだせるのでは、と考えています」

 そしてここには“経営感覚”に基づく、ある方針が背景にある。

「20年ごとに世の中は大きく振れ動くという考えのもとで、その流れに対してアンチでいようと意識しています。今であれば、フリー、バーチャル、二次元という大きな流れがあり、それに対しての限定感、リアル、三次元です」

 米作りに力を入れ、日本酒を全て知り尽くした上でやっと顧客に“リアル”を届けることができる、それがバーチャルや二次元がキーワードとなる今の時代にこそ必要だと考えている。