今年2月には、新日本製鉄と住友金属工業が合併を発表した。最近では、当事者たちは否定しているものの、日立製作所と三菱重工業が経営統合を検討しているという報道が流れた。この10年ほどを振り返っても、製鉄、紙パ、医薬品などの業界で、大型の経営統合や合併が増えている。こうしたM&Aについては、表立っては語られないもう一つの狙いがある。今回はそのことについて考えてみよう。
経営者が口にしない
合併の派生効果
日本の国内で、企業合併や経営統合が増える時期は、景気が下向きのときだ。米国でもM&Aの件数には波があるが、景気と関係なく、ある企業が一人勝ちしていって、次々と他の企業を飲み込んでいくというケースも多い。最近では、フェイスブックなどは、1ヵ月に1社のペースで企業を買収していると伝えられている。
これに対して、日本の場合は、景気が上向きのときには、経営統合や企業合併、特に大型のM&Aはほとんど起こらない。日本では、大型のM&Aは不況期の「生き残り策」として出てくるところに、その特徴がある。
日本の場合、大型合併では吸収合併ではなくて、ほぼ例外なく「対等合併」という言葉が使われる。しかし、実際のところ内部では、官軍と敗軍が存在する。その意味では、企業が合併する時には、どちらの企業が合併後に主導権を握るかということが、内部で働いている人にとっては死活問題になる。働く人にとっては、これは当たり前のことで、自分のポジションや処遇がどうなるかが、目の前にある喫緊の課題だからである。
対等合併においてすら官軍と敗軍の関係になりがちなので、みな心を一つにして頑張ろうということになりづらい。つまり、経営者は組織がうまく機能するように、内部マネジメントを上手にやらないと、従業員が能力を発揮するという面で、合併効果が上がらないということになってしまう。