2017年7月7日、天皇陛下は、企業視察の一環として、日本ゼオンの川崎研究所と工場で光学フィルムの製造試験設備、合成ゴムの製造工程を見学された。陛下は、皇太子の時代から視察を続けられているが、即位後もほぼ毎年実施されているという 写真提供:日本ゼオン

 陛下は、もともと生物学者であられますから、そうした変化には敏感なのだと私は嬉しくなりました。ゴムが雲のように現れる様子が面白かったそうです。

――陛下の企業視察は、社内に特別招聘チームのようなものを立ち上げ、宮内庁に日参するなどして「ぜひ、弊社も候補企業に加えてください」と働きかけるのですか。

 いやいや、違います。当社として、そうしたお願いをしたことはありません。宮内庁にお願いしたら、順番待ちで陛下が来てくださるという性質のものでもないでしょう。

 やはり、戦後間もない1950年に創業してから、日本ゼオンは「人のまねをしない、人にまねができない独創的技術」を重視してきた企業であり、ニッチな分野で数多くの世界初・世界一の製品を生み出してきたユニークな化学メーカーであるという点に、陛下がご関心を持っていただけたのだと受け止めています。私たちは民間企業として、日本で初めて合成ゴムの製造に成功した会社でもあります。

 そう言えば、ここ5年間ほど、監督官庁の経済産業省から「設備を見せてください」との要望があり、何度か幹部職員の方々を各地の現場にお連れする機会がありました。もしかしたら、そうしたことも、今回の視察につながったのかもしれませんが、経産省と宮内庁の間でどのようなやりとりがなされたのかということまでは分かりません。よく聞かれるのですが、私たちが選ばれた理由は今も謎のままです(笑)。

社内の全員を巻き込む
イノベーションの狙い

――社名の英語表記は、Zeon Corporationです。日本の人気アニメーション作品「機動戦士ガンダム」に出てくる、敵方のジオン公国軍のスペルと同じになります。