「この1~2年は、電池材料メーカーにとって試練の時期になる」。自動車各社が電気自動車(EV)の増産計画を相次ぎ打ち出し、拡大が確実視されるリチウムイオン電池市場。しかし、阿部功・住友金属鉱山電池材料事業部長は、複雑な表情を浮かべてこう語る。
住友鉱といえば、EVの勝ち組といわれる米テスラ向けリチウムイオン電池に、主要4部材の一つである正極材を供給する世界唯一のメーカーだ。
その同社ですら現状に小躍りできないのは、原料不足の懸念があるからだ。今後のEV市場の急拡大を鑑みると、正極材の原料であるニッケルやコバルトは、「今のままではどう考えても足りなくなる」(正極材メーカー役員)。
このところ、メタル価格の低迷で鉱山の新規開発案件は減っており、今から開発を始めようとすると、原料を安定供給できるようになるまで、物によって早くて2年、遅ければ5年はかかる。
つまり、2022年ごろまで正極材原料の安定供給のめどが立たないというのに、自動車各社はこぞってEVの大増産計画を立てているわけだ。