“攻める発想”を生み出す現場にするには?

――「斬新なアイディア」「面白い発想」の企画が制作側から上がってくるよう、編集長として制作現場に対して意識していることはあるのでしょうか。

熊埜御堂 プロデューサーから提案がきたときに、なるべく、潰さないようにしていますね。実現できるための種を見つけてあげたり、その種をどうしたら育てていけるかというアイディアをこちらからもなるべく出して現場に持ち帰ってもらったり。「編成としてはこういう切り口だったら行けるかもしれない」という実現につながる方向性を提示します。

 プロデューサーやディレクターが企画の説明に来てくれるときは、そのときに初めて企画書を読むことも多いのですが、まずはとにかくちゃんと話を聞くんです。そして、基本的にはどうやったら番組になるか、もっと面白くなるか、こんな演出はできないか、こんな出演者はどうか、など、相当率直に思ったことをそのまま伝えます。

 時には私の妄想がすごく膨らんでしまって「こんなことを(制作現場にいない)私が言ってもいいのかな」と思うことがあっても、自分の中でその思いが強ければ、「例えばだけど」と前置きしつつ、番組の演出やメッセージ、期待したいことをいろいろしゃべります。

 そうすることで、もしかしたら相手は「そういうこともアリなんだ」と思うかもしれないし、そこから固まっていたアイディアが動き出して、いろんな可能性を考え出してくれるかもしれない。そこに期待して率直にしゃべります。そうできるのも制作現場のディレクターの想い、というのを私は信じているからこそ、ですが。常に、最善で、最新で、面白いことはどういうことなのか、自由に考えてもらえる状況を作りたいと思っているんです。

Eテレだからできること

――NHKには総合、BSもありますが、特にEテレだからできること、というのはどんなことでしょう?

熊埜御堂 今の時代、総合的な、マスを狙うってすごく難しくなっていると思うんですよ。“みんな”を相手にしていくというのは、すごく迷うし、戦略を立てるといっても、1000万人を相手に何かするというのは非常に難しい。

 逆に、人の興味がすごく細分化していますよね。「自分がここで勝負したい」と思う部分もすごく細分化してると思うんです。

 Eテレが注目されるようになったのも、実はそこが関係しているんじゃないかと。Eテレの番組はすごく細分化されているし、ターゲットがはっきりしているので、みんながそれぞれに「私はこれが好き」というのを見つけてSNSなどで発信してくれるから、そういう形で話題にしてもらいやすい。そういうターゲットがはっきりしているものを作るのは、Eテレだからできることだと思っています。本当はもっと細分化してきたいくらい。ただ、細分化といっても決して、マニアックになるのではなくて、「本物」にこだわりたいとは思ってるんですけどね。

――逆に、Eテレならではの難しさはありますか?

熊埜御堂 やっぱり、予算、ですかね。「Eテレが攻めている」と話題にしていただいても、突然「攻める予算」が付くわけではないので(笑)。