日本IBMは日本企業に対し、グローバルに標準化、統合された経営基盤の構築を提案している。世界170ヵ国で事業を展開するグローバル先進企業としてのIBMの取り組みと、その中から導き出された、日本企業に適したグローバル化の課題克服方法について、ポール与那嶺取締役専務執行役員に聞いた。

円高傾向で急速に高まる、グローバル化への関心

ポール与那嶺ぽーる・よなみね/日本アイ・ビー・エム株式会社 取締役専務執行役員 営業担当。1957年生まれ。KPMGコンサルティング代表取締役社長、同会長、日立コンサルティング代表取締役兼CEOを経て、2010年5月日本アイ・ビー・エムに取締役専務執行役員として入社。2010年9月から現職。

――日本IBMでは昨年11月から、「GO GLOBAL」というテーマを掲げたキャンペーンを展開していますね。

 近年のビジネス環境を見ると、新興国への事業展開を加速しないと、成長のチャンスを逃すだけでなく、ビジネスの継続すら難しい立場に陥りかねない状態です。IBMも、かつては地域ごとに分散した経営を行っていましたが、90年代の経営危機を契機に、集約型のグローバルな経営モデルに転換しながら新興国へのビジネスを展開してきました。こうした経験を参考にしていただきながら、日本企業の経営のグローバル化をお手伝いしたいと掲げたテーマが「GO GLOBAL」です。このテーマに沿って、「営業」「人材」「会計」「IT」「サプライチェーン」「コラボレーション」「アウトソーシング」の7つの重点分野でソリューションを提案しています。

――「GO GLOBAL」というテーマに対する、日本企業の反応はいかでしょうか?

 今年の前半は東日本大震災の影響から、お客様も震災からの復旧・復興、節電対応などを優先されていました。しかし、円高傾向が大きな要因となり、9月ごろからはグローバル化に関連する相談が増えています。

 私は毎週、平均で十数社を訪問していますが、どの企業の経営層も、海外での売上成長や、既存の投資案件の収益性改善、セキュリティや内部統制の必要性の高まりにともなうガバナンスの強化など、グローバル対応を重要課題と認識されています。

――「グローバル対応」の中で、相談内容として一番よく挙がる課題は、どんなものでしょうか?

 もっともよく話題に挙がるのが、「グローバルな人材をどう獲得するか・育てるか」という課題です。みなさん「英語力」に着目されていますが、「グローバルな人材」イコール「英語ができる人」ではないと思います。どこの国の人を相手にしても、はっきり、言うべきことを言い、するべきことをする人こそが、グローバルな人材です。それさえできれば、多少英語がおぼつかなくても何とかなるものです。

 それに、あと10年経たずとも、言語の問題は、翻訳ツールなどのテクノロジーの進歩がかなり補ってくれるようになるでしょう。むしろ、多様な文化や考え方を持つ人が集まる中で、議論や意思決定を行う力のほうが問われます。

――どうしたら「グローバルな人材」を獲得し、育てることができるのでしょうか?