ジョーンズ イエス・キリストが「金持ちが神の国に入るより、ラクダが針の穴を通り抜ける方が簡単である」と述べているとおり、キリスト教では、「清貧は美徳であり、富と欲は罪である」と教えています。キリスト教徒の経営者が多額の寄付をするのも「富を所有しているのは罪である」という考えが根底にあるからです。

 ローマ法王フランシスコは、「土地・住まい・雇用は「神聖な権利」である」と主張し、経済的な不平等について厳しく批判してきました。この法王の立場は、長年カトリック教会が発表してきた社会教説の流れに沿ったものであり、もともとは19世紀末にローマ法王レオ13世が公布した回勅に端を発します。レオ13世は自由市場の行き過ぎを批判し、労働者の団結の権利を肯定し、ラテンアメリカの経済に非常に大きな影響を与えました。

 カトリック教会は過去100年以上にわたって、格差を拡大させるばかりの資本主義のあり方を批判してきました。英国国教会も同じです。イギリスでは、キリスト教社会主義の考えをもつ人たちが中心となって、格差問題に警鐘をならしています。

佐藤 日本人経営者の場合、儒教の考え方に影響を受けている人が多いと思います。明治時代に500以上もの企業を設立した「日本資本主義の父」、渋沢栄一が提唱した合本主義(公益を追求するという使命や目的を達成するのに最も適した人材と資本を集め、事業を推進させるという考え方)も、もとをたどれば儒教の教えでしょうか。

ジョーンズ 合本主義は、儒教を進化させた考え方です。渋沢は、儒教の教えを近代に合うように再構築したといってもいいでしょう。儒教は家族を重んじますが、彼は、「人間には家族を大切にする責任があるのと同じように、国や企業には、そこに属する人々をよくする責任があるのだ」と提唱しました。お金儲けは儒教のシステムの中では「悪」ですが、その教えの一部をビジネスへと応用したのが渋沢栄一なのです。

佐藤 アメリカの起業家の中には、トニー・シェイ(ザッポス・ドットコムCEO)やジョン・マッキー(ホールフーズ・マーケットCEO)のようにコミュニティーのような会社をつくって、利益を社会や従業員に還元している人もいます。なぜ彼らはこのような会社をつくったのでしょうか。