平井 せっかく、何かしら大きな希望やアスピレーションを持って会社に入ったのに、飼い殺しにされるのはつらいですよね。大企業によってはまず入社時に学歴でランク付けされ、その後の若手時代の研修や配属先での「成績」によってある程度役員コースとそうでない人に振り分けられるというような会社も存在します。

 また、評価が加点よりも減点主義に近いものなので、エリートコースに乗った人はそれから先、なるべく無難に事故がないよう大人しく過ごして、役員で「上がり」かあるいは子会社に出向する。30代そこそこで自分の会社の中での将来が決まってしまい、それから定年まで何十年も、なるべくつつがなく過ごさなければならない。

 もちろんすべての大会社がこうではないし、全員がそうなるわけではないですが、それでもあえて暴論的な言い方をすれば生ける屍のように、大過なく過ごしていく。そんな人生で本当にいいのでしょうか。

 それから社員の飼い殺しと並んで、新卒の一括採用もさまざまな歪みを生じさせていると思います。

就職人気ランキングが
20年前と変わらない

岡島 おっしゃる通りですね。新卒一括採用も大きな人材育成の阻害要因だと思います。新卒といえば、20年来就職したい企業ランキングの顔ぶれが変わらないことも私は憂慮しています。これはなにが原因かというと、結局親世代の影響なんですよ。親が自分の若いときにいいといわれていた企業のイメージを引きずっていて、子どもにもその企業を勧める。私も昔三菱商事をやめてマッキンゼーに行くといったら母親に泣かれました。マッキンゼーをやめてベンチャー企業に転職するときにも、もう一度泣かれましたけど(笑)。

平井 僕も就職するとき、当時台頭しつつあったあるエンターテインメント関連の企業に行きたくて、もし入れたら、こんな事業をしたいとか、こんなサービスがあったらなんて夢想していたのですが、親に強硬に反対されて結局応募しなかった。でも今や20年前に安泰だと言われていた企業にも、何が起こるかわかりません。権威やネームバリューに惑わされず、好きなことがあれば、それを目指すべきです。

岡島 親が昔いいと思ったのと同じエスタブリッシュな企業を子どもに強いたり、採用する側としても、安心感から自分と似た経歴の人を選んだりしがちという側面はありますね。年功序列を壊したり、同質性の罠を逃れるには、やはり外の血を入れるなど「視点のダイバーシティ」が必要です。この場合のダイバーシティとは、何人女性管理職がいるとか、外国人がいるとかの属性だけの問題ではありません。異なる視点や考え方を持つ人たちが一緒に働く、今までの成功モデルのバイアスを外す視点がある、というのが真のダイバーシティです。