その実例が、ソニーや東芝といった大企業によるクラウドファンディングの活用事例だ。クラウドファンディングの国内プラットフォームである「Makuake」において、その2社が新しいコンセプトの製品を発表し、資金調達を実施した。

 ソニーは2014年に文字盤とベルトが一体化した電子ペーパーの腕時計の開発プロジェクトをMakuake上で立ち上げた。東芝も16年に体内のアルコール濃度を測定する機器の企画を発表した。

 それぞれ資金調達の目標額はソニーが216万円、東芝が150万円。2社ほどの大企業がその程度の資金集めに困っていたはずがなく、それよりも、その製品がどれほど消費者に支持されるかを見るのに使っていたというわけだ。ソニーに至っては、社名を隠して資金を募り、製品自身に対する純粋な反応を見守る徹底ぶりだった。

 あるソニー幹部は、「大企業で新しい製品や事業を始めようとすると、『どれくらいの事業規模になるのか』という議論が先行してしまい、何もできなくなる」と明かす。銀行だけでなく企業側も、大企業化に伴って、社内の新製品や新事業に対する目利き力、チャレンジ精神を失いつつある側面は否定できない。

 そのため、大企業と消費者とが直接結び付く場を提供し、「大企業病」の論理から企業を解放するというのも、クラウドファンディングの重要な機能の一つなのだ。

「大企業病」に毒され、目利き力やチャレンジ精神を発揮できなくなってきた日本の銀行や大企業たち。そんな彼らの代わりとして、一消費者にスポットが当たる世界を、テクノロジーの進展が生み出しつつある。

 企業が革新的な製品・サービスを出すのをただ待つのではなく、私たち一人ひとりの「欲しい」「応援したい」といった感覚と資金の提供を束にすることで、イノベーションを生み出す原動力になる世界が訪れつつある。