来年のドル円相場は115~120円の上値を繰り返し突っ掛ける展開を予想する。今年はこれまで110円前後のレンジを上抜けできず、上方へと動き始める場面を辛抱強く待つことが多かった。この忍耐が報われる条件がそろったのはここ1、2カ月だ。米国・世界の景況改善を背景にリスクオン環境下の円安機運が次第に強まった。

 トランプ政権の政策実現性への懸念が喧伝されがちだが、選挙公約の華々しさはなくなっても、小規模に分散された政策が米景気の底堅さに寄与している。米議会は減税法案の年内実現に動いている。米経済成長率は今年2.2%、来年2.4%を見込む。完全雇用下で巡航速度を超える成長が続けば、賃金・物価がじわり上向き、米金利の上昇に沿って、ドル円は上値トライを繰り返すはずだ。

 底堅い内需と財政政策に加え、外需の改善も米景気をサポートする。今年半ばには欧州やカナダの景況改善がその通貨を反発させ、ドル安を促した。このドル安に乗じて、中国は元安と資本流出の抑止に成功した。中国リスクの後退はアジア全般の見通しを安定させた。世界景況の改善で、資源など商品相場も新興国市場も底堅さを増している。外需好転とドル安は米企業の輸出と海外収益を増加させ、米株の一段高を促している。

 米株高は日本株高をもたらし、リスクオン機運が円安を誘う。日本株価とドル円の密接な連動はよく知られる。円安は、日本企業の輸出と海外収益を増加させること、外国人が円安でドル換算した日本株保有比率の低下分を買うこと、これに投機の買いが便乗すること等で、日本の株高を招く。ただし足元では、日本株価の上昇にドル円が追随せず、両者が乖離している(下図参照)。