国内トップの日用品・化粧品メーカーである花王が、長年手を焼いてきた中国事業について来年度にも黒字化できる見通しとなった。
1993年に進出して19年目を迎え、ようやく成果が出てきたことになる。いったい何が変わったのか。
「昨年9月に販売した衣料用洗剤の『アタック瞬清』が中国市場に受け入れられた。特に上海地域では衣料用洗剤分野で10%のシェアをクリアできた」
花王にとって、中国では初めてと言ってよいヒット商品が誕生した。洗濯後のすすぎが1回ですむのが特徴である、「アタック瞬清」だ。
中国は水不足の地域が多く、節水ニーズに対応した商品は、中国市場で受けていたのだ。
特に、洗濯機が普及していない中国ではまだ手洗いする家庭が多く、すすぎの回数が少なくてすむことのメリットを実感しやすいのだという。
花王は現在、中国で衣料用洗剤「アタック」、紙おむつ「メリーズ」、化粧品「ソフィーナ」を販売しているほか、企業向けに香料など化学品を販売している。
子会社のカネボウ化粧品は一定規模の成功を見ているが、花王との相乗効果はまだ見出せていない。
ライバルのP&Gやユニ・チャームが中国事業を成功させていく中で、花王は事業の拡大に苦戦してきた。あるライバルメーカーによれば、「一時は中国事業を諦めて、縮小しようという議論もしていたと聞いた」というほど追い込まれていたようだ。
しかし、3年程度前から戦略の見直しを行う。
それまで高額所得者向け商品主体だったが、それに加えて、アタック瞬清などの中間所得層向け商品を投入した。
また、従来は現地に任せていたマーケティングについて、日本からもノウハウを提供する体制に移行。日本でのヒット商品や成功事例をすぐに中国を初めとしたアジア諸国に移転することで、ヒット商品が生まれ易い環境を整えた。
世界の日用品メーカーが今、最も注目しているのが中国だ。約13億人という巨大な人口を抱えるマーケットで、成長へのポテンシャルは高い。
矢野経済研究所の調査によると、化粧品市場の規模は2009年度が約908億元(約1兆1000億円)で、年率10%以上のペースで成長している。先進国の需要は頭打ちになっており、このマーケットで成功しなければ、企業としての成長は難しいだろう。
花王は、安徽省に紙おむつや生理用品を製造する工場を建設しており、2012年末に稼動する。中国4番目の工場だ。現在、紙おむつは日本から輸出しているので、これでコスト競争力がつき、業績改善に弾みがつくのは確かだろう。
ただし、花王の中国事業の売上高はまだ約300億円しかない。他の国外メーカーの規模に比べると、かなり小さい。
今後、まだ商品の供給が進んでいない内陸部の販路開拓を進めるとともに、現地メーカー・卸会社との提携など新たな施策に打って出る可能性もありそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)