抜歯しても消えない「歯痛」に
転々とドクターショッピング
「うぅ痛い!」
ある日、知香子さん(仮名・50歳)は鈍い痛みに顔をしかめ、左の頬を押さえた。
(虫歯かしら。それとも、以前治療したところの内部が悪くなったのかな)
疼くように痛むのは左の奥歯付近。「どの歯が痛い」と特定はできないが、とにかく「歯が痛い」と感じたので、さっそくかかりつけの歯科クリニックを訪れた。
訴えを聞いた歯科医師は「レントゲンを撮る」と言った。
「うーん、特に悪くなっているようには見えませんが、とりあえず前詰めたところを外して中を見てみましょう。これは響きますか?」
金属の器具で歯をトントンと叩くが、響きもしなければ痛くもない。
「ひいえ、なんほもありあひぇん(いいえ、なんともありません)」
口を開けたまま答えると、歯科医師は首をかしげ、ほかの歯も叩いた。やはりなんともない。結局、以前治療したことがある下の奥歯の詰め物を外し、今度はシューっと空気をかけるも、やっぱり全然痛くも、しみもしない。
「おかしいですね、歯肉の方も全然異常ないですよ。今日は中をキレイにしておきますから、これで様子を見てみましょう」
応急の詰め物をし、帰された。もちろん、「歯の痛み」は消えない。