「非歯原性歯痛」とは、文字通り、痛みを感じる歯には何も原因がなく、痛みを感じる歯と離れた部分に歯科疾患とはまったく異なる異常があって歯痛を生じさせる病気のこと。通常の、「歯科疾患が原因の歯痛=歯原性歯痛」に対して、歯科的原因によらない歯痛という意味で非歯原性歯痛と呼ぶ。 

「非歯原性歯痛」のスペシャリストである和嶋医師

聞きなれない病名だが、歯科の国家試験にも毎年出題される、本来、歯科医なら知っていなければならない疾患である。

「ところが診断できる歯科医も少なければ、治療できる歯科医も当然少ない。どの歯科医でも的確な診断と治療ができるようにしようと口腔顔面痛学会が長年頑張っているのですが、なかなか進展しません」(和嶋医師)

 さらに詳しく説明すると、歯痛、歯肉痛をはじめ、舌、口腔粘膜の痛みなど口の中のいろいろな痛み、顎の痛み、顔の痛みなどの総称に「口腔顔面痛(こうくうがんめんつう)」という疾患があり、非歯原性歯痛はその一種に分類される。口腔顔面痛の患者は、40~50代の女性が多い。

 和嶋医師によると、口腔顔面痛外来を受診する患者の約半数は、知香子さんのような「原因不明の歯痛」、つまり、非歯原性歯痛なのだという。

 また、非歯原性歯痛の原因は8つに分類されており、最も多いのは『筋・筋膜性歯痛』、いわれる筋肉のコリによる痛みで、全体の約5割を占めている。

 肩こりが強いときに頭が痛くなったり、歯が痛くなったりするのと同じように、咬筋(頬)、側頭筋(こめかみ)、胸鎖乳突筋(首)が筋・筋膜疼痛という状態になると、離れた所にある歯に関連痛として痛みが感じられることがあるのだ。

 ◎非歯原性歯痛を引き起こす8つの原因

  1)筋・筋膜性歯痛
  2)神経障害性歯痛(三叉神経痛、帯状疱疹後神経痛など)
  3)神経血管性歯痛(片頭痛、群発頭痛など)
  4)上顎洞性歯痛
  5)心臓性歯痛(心筋梗塞や狭心症)
  6)精神疾患または心理社会的要因による歯痛(身体表現性障害,統合失調症,大うつ病性障害等)
  7)特発性歯痛(非定型歯痛を含む)
  8)その他の様々な疾患により生じる歯痛