Postmanのキャラクター(左上、参考商品)と、実際に販売される年賀状(1枚97円~、国内料金)など。外国人の利用も想定し、和風のデザインも用意。カードの売上枚数は3年間で400万通を見込む。今後、スポーツやタレントなどの大型コンテンツとのタイアップカードも販売予定。

 今年もそろそろ、クリスマスカードや年賀状を用意しなければ――。いかにネット社会とは言え、節目のイベントは、リアルのカードで自分の近況を伝えたいという人は少なくないだろう。しかし、厄介なのが、SNS上でつながっているものの、送付先がわからない友人たちだ。改めてメールで住所を聞いて、返信を待って……というのも億劫だ。

 そんな悩みを解決するのが、電通が日本郵便と連携してサービスを展開する「Postman」だ。年賀状の場合、ユーザーは、Facebook上のPostmanアプリで日本郵便発行のお年玉付き年賀はがきのデザインを選び、メッセージなどを書き加え、受け取る友人を設定できる。住所は自分でも入力できるが、もしわからなければ、Postmanが代わりに受取人に住所入力を依頼してくれる。最後にクレジットカード決済で注文が確定すれば、自動的に年賀状が送られる仕組みだ。

 SNS上でつながりのある友人に年賀状を送るサービスで先行したのは、4年前にスタートした「ミクシィ年賀状」だ。2009年に約70万通、10年に約100万通、11年に約104万通が送付された。

 それに対し、PostmanはFacebook上で展開されるため、海外の友人にも送付でき、かつ受け取れるのが特徴だ。もちろん、海外の友人同士でのやり取りも可能である。間違えやすい海外の住所を受取人に書いてもらえれば、誤配も防げる。

 また、Postmanのサービスは年賀状に留まらず、年間を通じて国内外へのグリーティングカード(クリスマス、結婚、誕生日、父の日、母の日など)の送付に利用できることも、ミクシィ年賀状にはない利点だ。

 電通では、今年2月に米国のFacebook社と業務提携。Facebookを活用した新しいサービスの展開を模索し、すでにその領域で知見のある日本郵便と連携することにした。その結果、従来の言い回しなら、デジタルとアナログの融合、最近流行りの言い方をすれば、「O to O」(O2O、オンライン・トゥ・オフライン)のビジネスモデルであるPostmanが誕生したのだ。

 Postmanは、日本版のFacebookアプリとウェブサイトのオープン(11月25日予定)に続き、英語版のアプリとウェブサイトも立ち上がり、ウェブサイトへはTwitterのアカウントからのログインも可能になる。来年初めにはスマートフォン用のアプリも登場する予定。たとえば、旅先のフランスでスマートフォンにで撮影した画像を、日本の友人へカードにして届けるといったことが簡単にできるようになる。今後も、他のプラットフォームやデバイスへの拡張を積極的に進めていく計画だ。

 さらに、来年はギフト市場にも進出する。SNS上の住所がわからない友人などに、カードだけでなく、プレゼントも贈れるようになる。つまり、本格的な物販ビジネスを展開するわけだ。第1弾として、バレンタイン商戦で、チョコレートの販売を展開する予定を立てている。

 BtoB向けのサービスとして、広告やプロモーションでの活用も模索している。企業が承諾と住所入力をしてもらったユーザーに対して、サンプル商品を送るといった手法だ。

 根本にある設計思想は、デジタル世界のユーザーとリアルの住所を紐付けるマッチングサービスという、極めてシンプルなもの。しかし、それが単にSNS年賀状に収まらないのが、Postmanの奥深さと言えるだろう。今後、どれだけ大きなビジネススキームに発展するかを期待しつつ、じっくりと状況を見極めたい。

(大来 俊)