VMware(ヴイエムウェア)は、業務アプリケーションを動かすためのサーバーやネットワークを運用管理する「仮想化ソフトウェア」の分野で世界ナンバー1の企業である。10月に日本で行われた同社のイベントにパット・ゲルシンガーCEOが来日し、注目を集めるAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)との提携や、日本企業のデジタル変革への考えを語った。

日本のIoT技術は世界で勝てるのか

クラウドのスピード感が、自らのビジネスも変えていく<br />――パット・ゲルシンガー VMware CEOに聞くパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)
VMware,Inc.最高経営責任者(CEO)

インテルに30年以上勤務し、初代最高技術責任者(CTO)はじめ半導体技術部門の要職を歴任。PC用プロセッサの設計をはじめ、企業向け製品の開発を指揮した。その後EMCに移籍し、社長兼最高経営責任者(COO)を務め、情報インフラ部門を率いる。2012年9月、VMwareに入社して現職。CEO就任5年を迎えた
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――今回の来日に合わせて、日本企業の複数のCIOとミーティングを持たれたということですが、日本のCIOの印象に変化はありましたか。

パット・ゲルシンガーCEO(以下・略) 私の認識では、日本企業は全体として、欧米に比べて保守的で、慎重であるがために新しい技術を採用するのがやや遅れてきたと思っています。

 以前は2年ほど遅れているという認識でしたが、いま急速に採用のカーブが上昇しているという印象です。クラウドの検討が進んできている中で、ハイブリッドクラウド(自社所有のデータセンターとクラウドを接続する技術)への関心が高まっています。

 また、特にIoTの分野では、日本企業にとって世界をリードするチャンスだと思っています。多くの工場の自動化(ファクトリーオートメーション)、産業用ロボットの分野で日本が持っている能力を活用することができます。ヴイエムウェアでは、トヨタ、富士通などを筆頭にこの分野で協業を進めています。

――日本はソフトウェアの開発力が弱く、モノがソフトウェアで制御されるIoT時代には日本の優位性が失われるという指摘があります。ゲルシンガーCEOは、以前から日本のモノづくりの技術はIoTで大きく飛躍する可能性があると発言していますが、なぜ、日本のIoT技術について楽観的なのでしょうか。

 ただ楽観的というわけではありません。今後の取り組みによってリーダーになれるチャンスだと思っています。

 ご指摘の通り、日本のソフトウェアの技術は必ずしも世界トップではありません。ですがIoTは、単にソフトウェアの話ではなく、ハードウェアにソフトウェアを組み込む技術が必要です。どうやってデジタルを物理的な世界とつなぐか、この部分では、日本の技術は世界一だと思います。しかもVMwareと一緒に仕事をしていきたいという熱意を感じています。IoT市場は世界的にまだ初期の段階で、勝敗は決まっていません。日本の潜在能力を生かせば世界に先駆けることが可能だと思います。

 また、ソフトウェアの分野では米国の企業が世界で存在感があり、VMwareもその1社ですが、そうしたソフトを企業へ「情報システム」として導入する技術は、日本の企業が非常に高い。我々は富士通、日立、NTTなどといった日本のシステムインテグレーターと深い関係を構築しており、彼らと協業することで、新しいグローバル市場に対してアプローチすることができると考えています。