ジョン・マッキーはこの32年間、ホールフーズ・マーケットの共同創業者兼共同CEOとして同社を経営しつつ、一食料雑貨商であり続けた。マッキー率いるホールフーズの経営は、急成長を遂げた企業とは思えないほど順調である。従業員に活躍の場を設け、申し分ない給与を支払い、顧客には健康的でサステナブルな方法で育てられた食品をみごとな品ぞろえで提供している。これが彼の標榜する「コンシャス・キャピタリズム」(意識の高い資本主義)である。

その実現のためには、第1に、利益や株主価値の最大化だけでなく、より高い目的を意識したビジネスを目指す。第2に、顧客、従業員、投資家、サプライヤー、地域社会、環境との関係がゼロサム・ゲームにならないようにステークホルダー・モデルを理解する。第3に、リーダーは自分自身と組織の繁栄を同一視し、組織の目的にかなうように振る舞う。第4に、これら3つを実現させる企業文化を創造することである。

「意識の高い資本主義(コンシャス・キャピタリズム)」を目指して

HBR(以下色文字):あなたは最近、今後10年間もホールフーズ・マーケットで頑張っていくと発表しました。なぜこのような発表を行ったのですか。

ジョン・マッキー
John Mackey
ホールフーズ・マーケット共同創業者兼共同CEO。

【聞き手】
ジャスティン・フォックス
Justin Fox
『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌 エディトリアル・ディレクター

マッキー(以下略):その発表は、ウォルター・ロブが共同CEOに昇進することを決定した時のものです。これに加えて、2009年9月に私が取締役会長を退いたことから、私がホールフーズを辞めるのではないかと噂されるようになりました。そこで、身を引くつもりはないと発表することが重要だと考えたのです。

 共同CEOを三人にすることも考えたそうですね。

 はい、私たちはチームとして対等な立場で職務を果たしていますから。報酬も、私を除いて全員同額です。私は全額寄付していますので。私たちはコンセンサスで決めることが多いです。最高裁判所が判決を下しているわけではありませんから、投票で3対2といったことはしません。私たちは、真剣にコンセンサスを得たいと思い、互いを尊重しています。

 ある意味、共同CEOは5人でもよかったのです。しかしA. C. ガロとウォルター・ロブは共同社長であり共同COOでもあったので、ウォルターは共同CEO、そしてA. C. は一人で社長兼COOということにしました。それで皆、ハッピーになったようです。

 コンセンサスを重視するのは、創業時からのことですか、それとも年月を経てそうなったのですか。

 だんだんとそうなりました。コンセンサスによって物事を決め、反対意見をすべて出してしまったほうが、より優れた決定を下せることがわかったのです。そうしないと、自分の意見が通らなかった人間は、自分が正しかったことを証明したくなるのが自然の摂理というものです。「だから無理だと言ったんだ」とね。

 コンセンサスを得るのに時間がかかることはありますか。

 そのような時もあります。一般的に、ビジネスに大きな影響を与える決定をする場合は、十分に話し合うのがいいと思っています。

 これは日本の経営者が行う意思決定のやり方に少し似ています。日本では、意思決定グループ内でコンセンサスを得るために、通常以上の時間を割いています。

 このやり方のよいところは、意思決定には時間がかかりますが、組織内に抵抗や妨害がないため、実行がはるかにスムーズに進むということです。

 あなたのおっしゃる「コンシャス・キャピタリズム」(意識の高い資本主義)というのも、その一部ですか。それとも単にマネジメント・スタイルの1つでしょうか。

 マネジメント・スタイルの1つです。