インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が登場してからというもの、企業のレピュテーション(評判)をめぐる戦いが激化している。組織による後ろ盾も潤沢な資源もない個人がいとも簡単に、企業の名声や評判に深刻なダメージを与えられるようになったのだ。しかも、相手は小規模すぎて、企業が脅威を事前に把握し対策を講じておくことは難しい。不意を突かれて、こうした敵対者から攻撃された企業は、なす術がないように見える。しかし、効果的に対処する方法は存在する。

本稿では、BP、タイムライフ、アパート賃貸管理会社のホライゾン・グループ・マネジメント、ドミノ・ピザ、シェブロン、客船会社のロイヤル・カリビアン、小売りのターゲット、アメリカ国勢調査局などの事例に加え、軍隊における情報戦からの示唆を踏まえ、企業が適切に対応するための考え方や方法論について解説していく。

偽の社員が流すツイートに煮え湯を飲まされたBP

 企業は今日、自社のレピュテーション(評判)に対して新たな脅威に満ちた環境下で事業を行っている。

レスリー・ゲインズ=ロス
Leslie Gaines-Ross
ウェーバー・シャンドウィック
チーフ・レピュテーション・ストラテジスト

 大きな競争相手と戦う準備は周到であっても、ブログ、ミニ・ブログの〈ツイッター〉、テキスト・メッセージ、オンライン嘆願書(インターネット上の署名活動サービス)、〈フェイスブック〉の抗議サイト、デジタル動画といった、驚くほど強力な新しいメディアやソーシャル・ネットワークを武器に攻撃してくる小規模な敵対者の存在には、気づいていない場合が多い。

 しかし、たった一人のやる気満々の批評家がPCから発する猛烈な非難により、企業はダメージを被ってしまう。こうした話は巷間にあふれている。

 たとえば、BPのメキシコ湾石油掘削施設「ディープウオーター・ホライズン」の爆発に伴う原油流出事故のあと、リロイ・スティック(偽名)という人物が、これまた架空のBPグローバル広報部の代表者になりすまして、〈ツイッター〉のつぶやきを公表し始めた。

 原油がメキシコ湾に流れ出し、周辺地域の環境と経済に大きな打撃を与えている間、この風刺的な人物(〈ツイッター〉のアカウントは@BPGlobalPR)は、広報部のランチ・メニューといった他愛のない話をつぶやいていた。これを数万人がフォローした。その数はBPの公式ツイッター・アカウントのフォロワー数をはるかに超えていた。

 BPが原油流出を食い止め、ブランドに対する信頼を回復しようと懸命に取り組んでいる最中に、スティックはこの安上がりな方法を通じて、アメリカ国民の怒りをたきつけるのに一役買っていたのだ。

 この事例からもわかるとおり、企業と人々の関わり合いのルールは様変わりした。批判者はもはや大きな機関の資源を必要としていない。インターネットによって、大企業と個人活動家の土俵は等しくなった。なかには誠実な敵対者もいるが、全員がそうではない。その痛烈な批判は往々にして、正しいのは一部だけであり、明らかに完全な嘘だとわかる場合もある。

 企業を攻撃する人々はおそらく、思慮分別を欠いているのだろう。単独で大企業に立ち向かおうとする人はほとんどの場合、理性を失っているとはいわないが、かなり感情的になっている。

 しかも、経営者は不意を突かれ、対策を考える時間もない。従来は戦いが起こる時には、企業は少なくとも警告の兆候をとらえ、いささかなりとも事態の進展に対し手を打つことができた。しかし、新手の狙撃者の攻撃には手も足も出せないのだ。

 こうした攻撃への効果的な対処法を学ぶために、企業経営者は似たような脅威を扱ってきた組織、軍隊から知恵を拝借するとよいだろう。