30年かけて実現した「欧州単一通貨ユーロ」は、わずか10年たらずで終焉を迎えるのか――日々刻々と緊張感が高まる中、今週9日のEU首脳会議に世界が注目します。はたして欧州は、危機脱出に向け、大胆かつ有効な施策を世界に示すことができるだろうか?……その答えは「ノー」でしょう。

短期的な信用回復に追われ
構造的問題に連携して立ち向かわない首脳たち

「一部の多国籍企業が、通貨ユーロの消滅を想定した事業シナリオづくりを開始(11月29日付、英ファイナンシャル・タイムス)」「ユーロ圏の債務危機は世界経済に対する最大の脅威で、ユーロ圏崩壊の可能性も無視できない(11月28日、OECD経済協力開発機構)」「イタリアの破綻はユーロの終焉(11月24日仏独伊首脳会談)」…このようにユーロ圏崩壊の懸念が日々強まっています。

 こうした中、今週9日ブリュッセルで開かれるEU首脳会議では、「財政規律強化策」について、何とか一定の方向性は示されるでしょう(おそらく今週5日発表の独仏合意提案にある、来年3月までにEU加盟27ヵ国又はユーロ圏17ヵ国による承認を目指したEU基本条約の改正が軸)。これを受け、欧州中央銀行やIMFを核にした緊急救済策の拡充も進み、金融市場も、一時的には欧州経済に対し一定の信頼を取り戻すかもしれません。

 しかし、信用収縮の再来は時間の問題です。財政危機と金融危機が欧州全体、アメリカ、そして日本まで飛び火という最悪のシナリオも十分に想定できます。

 理由は、EU加盟国間の足並みの乱れにより、今回示されるだろう施策に具体性と実現性が欠けるだろうということもありますが、それ以上に、今回の財政危機の元凶であり構造的な問題でもある「シャドーエコノミー」への抜本的対策が示されないと思われるからです。

 なお、シャドーエコノミー(直訳:影の経済)の定義は様々ですが、ここでは違法ビジネスや犯罪行為(麻薬売買・密輸・資金洗浄・横領・着服等)を除く、「納税対象項目として税務当局への申告義務があるが、実際には申告されない労働収入、事業収入、保有資産」とします。