要約者レビュー
インターネットの普及により情報が溢れる現在、人間関係が複雑になり、人間の許容範囲を遥かに超えてしまっている。それゆえ、様々なストレスを感じ、自分にとっての「幸せ」は何なのか、模索している人も多いのではないか。
前野隆司、230ページ、PHP研究所、860円(税別)
そんな読者に紹介したいのが、幸せになるための学問「ポジティブ心理学」である。これまで臨床心理学は、心の病を薬物療法やカウンセリングなどで対処することに重きを置いてきた。一方、ポジティブ心理学は、心の病を予防し、人が今よりもさらに幸せな状態になることをめざし、幸せのための条件やその知見を社会にどう活かすかというテーマを扱っている。幸福度が高い人ほど、心の病にかかりにくい。性格の良さと幸福度は比例する。本書は、こうしたポジティブ心理学の興味深い研究結果を学ぶのに格好の入門書だ。
著者は、もともとロボットや脳科学の研究者だった。幸せのメカニズムを解明したいという思いからポジティブ心理学や幸福学の研究を始めた。従来の幸福研究に加え、工学者の立場から科学的分析によって、幸せにつながる要因を明らかにしている。その分析結果にはうなずけるところ、驚くところが数多くあるだろう。
仕事、家庭、友人関係などに関する悩みを抱えている方は、本書『実践 ポジティブ心理学』から幸せの4つの因子と、それらを向上させるエクササイズを学び、実践してみてはいかがだろうか。毎日をより満たされた気持ちで迎えられるはずだ。(岡 和明)
本書の要点
(1) ポジティブ心理学は、未病の人が「どうすればもっと幸せになれるのか」を解明する学問であり、ウェルビーイングの向上をめざしている。レジリエンスやマインドフルネスもポジティブ心理学の構成要素である。
(2) 狭く深い関係よりも幅広い人間関係を築いているほうが、人の幸せに寄与する。
(3) 日本人の「幸せの4つの因子」は「やってみよう!」因子、「ありがとう!」因子、「なんとかなる!」因子、「ありのままに!」因子である。