◆プロセスと経験にまつわるDEEP THINKING
◇プロセス自体がユニークさを生み出す秘訣

 素振りを100回やった人よりも1000回やった人の方が、習熟度は高まるだろう。しかし、何の効果も得られない間違ったやり方だと、習熟しないどころか肩を壊してしまうかもしれない。単一な経験は、一生継続しても成長につながらない可能性が高い。自分にとって正しいやり方かどうかに関しては、多様なやり方を試した方が正解を見つけやすくなるのだ。あらゆるバリエーションを試し、失敗をする中でようやく「自分にとっての正しいやり方=本物」に出合える。

 偶然、すぐに本物に出合えたとしよう。それは幸運でも何でもない。さまざまな経験をする機会が省略されてしまったため、今後自分が本物になる機会を奪われるとも考えられるからだ。たった1つの解決法を実行するのでは機械と同じで、そこからユニークさやあなたらしさは獲得できない。たったひとつの解決法で得た結果は、進化も成長も伴わない。要は飛躍がないのだ。

 一直線に結論にたどりつかずに遠回りをしたり、行き来を繰り返したりすることが、深く考えるということである。その行為自体に、自分だけのユニークさを発見するヒントが隠されている。そして、そのユニークさこそが自分だけの強みになってくれる。
 
◇思考の履歴と向き合うことで新たな発見にたどり着く

 人間は文脈依存的な存在である。物事の結果よりも、そこに至るまでのルートやプロセスが、その人となりに大きく影響する。つまり、経験を通して、人となりや思考の耐久度が形成されていくのである。どういう文脈を今の自分がたどってきたのか、これからどんな文脈をたどっていくのかが自分の血肉になっていく。

 その際、思考という経験を可視化するために鉛筆が最適なツールとなる。鉛筆で書いていると、無関係なことや書き損じといった思考の履歴が紙に残る。いわば思考の連続性がそのまま残るのである。こうした思考の回り道をしながら、思考の履歴と向き合っていくと、思いがけない新鮮な発見にたどり着く。

 その点、PCでとるメモには結果しか残らない。整然と文字が並び、そこに思考の痕跡はない。履歴の機能があっても、どこで打ち間違えたのか、どこで逡巡したかまではわからない。また、いくらでも修正可能だと思うと、深い思考は生まれにくい。そこで著者は、思考の遍歴を残すという覚悟を鉛筆にゆだねることを薦めている。

◇プロセスの質を評価する際に役立つ3つの視点

 プロセスに目を向けながら深く考える経験にこそ、価値がある。とはいえ、どうやってプロセスを評価すればいいのかという疑問が生まれる。あるタスクのプロセスの最中にいるときに、そのプロセスの質を問うのは難しい。著者は質の高いプロセスかどうかを考える際に、次の3つの視点を重視するという。

 1つ目は「現在地」を見ることである。プロセスをセルフチェックする際、今何をしていて、今わからないことは何かを明らかにすることで、思考のステップを冷静に振り返ることができる。

 2つ目は「プチゴール」を見ることだ。最終目標にたどり着くまでに、「必ず達成しないといけない」という小さな目標がある。それをサクッとクリアできるかどうかで、現在取り組んでいるタスクへの本気度や習熟具合を評価できる。