たとえばモーターは、1stモデルが最高出力30kWでコア体積5.1リットルだったのに対し、現在は53kWで2.2リットルと高出力化と同時に小型化している。コア体積1リットル当たりの出力は5.9kWから24.1kWへと、約4倍になった。これに電圧を加えた出力密度で見ると、約4.2倍である。

 バッテリーパックの小型軽量化も燃費の向上に貢献している。1stモデルの前期型は、単1電池を6本つなげたような円筒形電池を240本使って288V(ボルト)を得ていた。体積は約95リットルだった。2ndプリウスから昇圧システムが導入され、これが改良されて、現在のバッテリーパックは後部座席の下に収納できる約30リットルの体積になっている。体積比でいえば、68%の小型化になる。

 この背景にはパワー半導体の発達があり、初期型モデルと現在を比べると、システム電圧で2倍、素子面積当たりの損失は79%も削減されている。

 1stプリウスから現在まで、HVを担当してきたベテラン技術者にプリウスのエピソードを聞いた。すると、こんなコメントが返ってきた。

「1stモデルの後期型から米国に輸出を開始したが、冬季に気温が低くなるニューヨークで、ニューヨークタイムズ紙に『暖房を入れるとそれほど燃費がよくない』と評価された。じつはその点が最も危惧したところなので、痛いところを突かれたと思った。そこからエアコンの改良と室内の断熱を徹底的に研究した。2ndモデル(03年)で世界初の電動コンプレッサー式インバーターエアコンを採用し、3rdプリウス(09年)は排熱回収機を導入した。現在のモデルは、PHV(プラグインハイブリッド車)にガスインジェクション機能付きのヒートポンプエアコンを採用した。HVの改良は空調機能の改良の歴史でもある」

独自のエアコン改良で
暖房時の燃費低下を克服

 じつは、こうしたエアコンの改良はエアコンメーカーに全面的に依頼するスタンスをとらず、トヨタが積極的に開発にかかわっていた。

 ヒートポンプエアコンという技術で、室温が下がると急激に消費電力が大きくなるという欠点を克服した。現在は、室内がマイナス10度のときにエアコンを作動させても、省電力で運転できる設計になっている。

 トヨタは、“2050年にトヨタ車からのCO2排出総量を10年実績比で90%削減する”という目標を設定している。これは、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)のようなCO2排出ゼロのクルマに置き換えるという意味ではなく、内燃機関(エンジン)を積んだHVとPHVをラインアップの中心に据えながら、高効率化を追求し、CO2排出量を抑えるという意味だ。

 すでに「5thプリウスの商品企画は始まっている」というトヨタが、どのようなHVの発展を見せてくれるか、じつに楽しみである。

(報告/牧野茂雄、まとめ/CAR and DRIVER編集部)