【必読ポイント!】
◆日本独自のカレー文化の進化
◇「カレー味」の真相

 カレーライスは日本独自のスタイルだが、カツカレーやカレーパン、カレー南蛮、カレーうどんなども日本で生まれた独自のスタイルだ。他にもカレーラーメン、カレースパゲッティ、カレーチャーハン、カレーせんべいなどありとあらゆる食べ物がカレー色に染まってきた。

 この「カレー味」という概念も、おそらく日本人特有のものである。そして、カレー味にはトリックがある。カレー味のもととなるカレー粉はほとんどの場合、複数種類のスパイスを混合して作られる。スパイスの役割は大きく3つあり、「香りづけ」「色味づけ」「辛味づけ」である。辛味は厳密には痛覚であって味ではないので、ここに「味つけ」という作用はない。つまり、カレー粉を使った料理を食べて、われわれが「カレー味がする」と感じるのは、カレーの香りがカレーライスの味を想起させるからである。そしてカレー粉に味つけの作用がないから、どのように調味された料理にもプラスすることができ、バラエティ豊かなカレー料理が誕生したのだ。

◇ご飯との相性がカレーをここまで発展させた

 世界中にカレーは存在するが、カレー文化が存在するのは日本だけであるといえる。カレー専門店は日本では当たり前の存在だが、こうした業態は世界中のどこにもないのだ。インドで生まれた料理が外国人によってカレーと呼ばれるようになり、それが世界中に広がった。けれど、カレーが国民食と呼ばれるまでに進化し、愛され続けている国は日本だけなのである。なぜ、他の国では成長せず、日本でだけ成長したのだろう。

 はっきりとはわからないが、ご飯のおいしさとその味への執着が理由となりうるかもしれない。ジャポニカ米のふっくら、もっちりした食感と甘味のある深い味わいは、我々日本人にとって特別な意味を持つものだ。江戸末期から明治初期にかけて、日本では汁かけ飯がよく食べられていたそうで、日本でカレーライスが定着した理由も、汁かけ飯のバリエーションのひとつとして食べられていたからだという説もある。日本のカレーが世界中のどこにもないユニークな姿と味わいをしているのは、「ジャポニカ米をおいしく食べたい」という、日本人特有の願望がカレーの開発を加速させ、カレーを進化させてきたからではないだろうか。

◇カレー文化の進化のために

 これからのカレー文化が進化し、さらにおいしいカレーが生まれるチャンスを増やすためには、「カレーのオープンソース化」が必要だと著者は言う。

 カレーの世界で「秘伝」とされている先には、じつは解明できていない謎があるだけという場合もある。実践している本人でさえ、現象は理解していても、根拠や理由はわかっていないこともある。このように、おいしさが偶然に委ねられているようでは、なかなかカレー文化は進化しない。