制度が始まった平成14年度には7億円の予算が付き、その後、平成19年度には約14億4千万、平成23年度には約24億円が予算計上され増加傾向にある。つまり、SSHに指定された学校は、文科省から特別な予算配分があるということだ。そのような特別予算を得て、理数系学科や科学技術の教育を行うSSH。さすがに一般の学校と比べて、ほとんどの高校ではウェブサイトに問い合わせのメールアドレスを記載しているものの、問い合わせフォームまで設置している学校はやはり少ない。中には、学校名に「科学技術」と銘打っているにもかかわらず、問い合わせ先は電話番号だけというケースもある。

 さらに気になって、SSHのウェブサイトでスマホ対応ができているかも調べてみた。現在、SSHに指定されている高校は全国で203校。もちろん全部を調べてみたわけではなく、任意に20校ほどをチェックしてみただけだが、これがほとんど対応できていない。問い合わせフォームを設置している学校でも、スマホ対応になっていないケースも多かった。ちなみに、スマホ対応のウェブサイトなど、いまどきはそうハードルが高いわけではない。専門のウェブプログラマーでなくても、ちょっと技術のある人間なら文系の学生でも作れるし、テンプレートを活用すれば、HTMLくらいしか書けない僕でも構築できる。予算も学生のバイト代程度で事足りる。というか、SSHであればそれくらいの技術を持った生徒もいるはずだ。それなのに、理数系が売りのSSHがいまのウェブ環境にまったく対応できていないのは、怠惰であるとしか言いようがない。

 ちなみに、高校のトップに君臨する東京の男子御三家(開成、武蔵、麻布)、および灘高を調べてみたが、武蔵、灘高はスマホ対応。麻布もスマホ対応だが、メニューバーの文字が小さすぎてまったく役目を果たしていなかった。これはつまり、責任者が自分たちの学校のウェブサイトをチェックしていないということ。開成高校にいたっては、スマホ対応にもなっていない。

技術よりも「何を」作るか
その背景にあるのは「カルチャー」

 たかが問い合わせメールやスマホ対応のことぐらいで、中学・高校の教育を絶望視するのは過剰だと思うかもしれないが、そうではない。ことは「文化の問題」なのだ。技術や予算のハードルがさほど高くないことをやらないというのは、やる気がない、もしくはやる必要性を感じていないということ。校長をはじめとする学校運営の責任者にITカルチャーが備わっていないということだ。

 いまや、ICTはあらゆる産業の根幹である。農業や漁業でさえ、IT産業であるといえる。そんな時代に、ITリテラシーもなくITカルチャーもない学校が、どうやって科学技術人材を育てられるというのか。ITマインドのある人間なら、たとえ問い合わせの仕組みひとつ取っても、アナログでは気持ち悪いと感じる。電話やFAXでの対応に、嫌悪感すら抱くものなのだ。少なくともICT業界の人間は、デジテルでできることは何でもデジタルでやろうとする。それがカルチャーだからだ。たとえばソフトバンク。同社は数年前に本社から紙の書類を一掃したが、それは書類をプリントアウトする予算を削減するとか、環境に配慮するという理由だからではない。「IT企業だから紙は要らない。ていうか、紙なんてめんどくせー」という、まさに生理的な問題だったのだと思う。