「雇用統計」に表れる堅調さ
賃金はアップでも実感はまだ

 さて、来週は一般教書演説のほかに、米国から重要な経済指標が多く発表され、金融政策の決定会合も開催されます。

 経済指標として最も注目されるのが2月2日(金)発表の「雇用統計」です。これは、1月に雇用者がどの程度伸びたか、労働参加率(=人々がどの程度働こうとしたか)、失業率や時間当たり賃金上昇率等が発表されます。一つずつご説明します。

 まず雇用者数ですが、雇用の増減自体が、経済の強弱を占う重要な参考指標になります。米国はGDPに占める個人消費の割合が約7割と高いため、経済全体の先行きを占うためには、個人消費の重要度が高く、消費の源泉となる人々の収入が非常に重要です。人々の収入は、賃金(時間当たり賃金×労働時間)と雇用者数の掛け算ですから、その点でも雇用者数の増減は重要になります。

 このところの雇用者数の増加は、おおよそ月に17万人のペースで増えています(過去1年間の平均値)。これは、景気回復から9年目であることに鑑みると、極めて好調な雇用の伸びだと言えます。1月は、猛烈な寒波がアメリカの東部や中部を襲いましたが、天候の影響は通常ならばそれほど長引かないため、仮にその影響で弱めの数字が出てもあまり心配はいらないでしょう。

 賃金は2.5%程度のペースで増加してきていますが、給与が目に見えて増えているという実感は得られにくいようです。失業率が4.1%まで低下しているので、これまでの景気サイクルであれば目に見えて給与がアップしてもおかしくない状況にもかかわらず、なぜ賃金が上がってこないのでしょうか。これは、多くのエコノミストの間で議論されていますが、まだ明確な結論は出ていません。

 仮説の一つに、いわゆる「アマゾン効果」が波及しているとの見方があります。「アマゾン効果とは」スマートフォンの普及とネット販売の広がりなどによって、瞬時に商品価格が分かるようになったため、価格が安い方に落ち着きやすくなっているとの考え方です。この影響によって販売価格を上げられない状況が続けば、企業は従業員に支払う賃金を抑制してコストをコントロールしようとします。

 AIやロボティックスなどの新しい技術が、労働者にとって代わっていることも労働者の賃金に影響を及ぼしている模様です。米国の賃金の状況を産業ごとに見ると、ITで代替できる産業の賃金の上昇率は低めになっています。

 これらの現象が、今後も長期にわたって継続するかは定かではありませんが、新しい技術の広がりは現在も勢いを持って進んでいることから、当面は現在の傾向が続くと考えた方がよさそうです。