イラン・イラク戦争休戦後の1988年頃より、ビザ相互免除協定を締結していた日本へ、大量のイラン人が職を求めて来日。その後、不法滞在者の増加などによって92年協定は解除されるが、そのまま日本に居ついた不法滞在者たちの一部が不良化。日本のヤクザと結びついて、次第に覚醒剤の販売利権を手にするようになっていったのである。

 といっても、その利権はユーザーに小売りする末端の売人利権であり、今も昔も、イラン人密売グループはヤクザの支配下にある。

「もしイラン人グループがさらなる利を狙って、勝手に日本人の売人相手に卸なんか始めたらヤクザが黙っていない。まあ、奴らもそのへんはよく分かっているから、無茶なことは決してしないよ」(A氏)

 最後に、最低でも10万人以上はいると見られる“消費者”だが、これは警察、ヤクザ、どの関係者に聞いても「普通の勤め人が大半を占める」と答える。

 さらに、90年代までは10~20代の若者が多かったが、近年の特徴として中高年のユーザーの割合が非常に高いことが挙げられる。これについての詳細はここで触れる余裕はないが、簡単にいえば、カネを持った中高年のサラリーマン層(女性も含む)が、現在の覚醒剤市場の“メイン購買層”ということになる。

手間がかかる作業で意外に地味
知られざる売人の生活

 それでは最後に、売人A氏を例に、「知られざる密売人の生活」の一端を紹介したい。

 場所は関東某所。1日のスケジュールはざっとこんな感じだった。

 14時過ぎ、量販店で購入したという、地味なグレーのスーツ姿で自宅を出る。約3000万円だったという建売の一戸建ては、「現金」で購入した。もちろんシャブで稼いだカネだ。

「末端の売人は、派手なジャージなど、いかにもチンピラ風の格好で商売するからすぐに職質(職務質問)を食らったりする。とにかく目立たないことが重要だ」